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連載小説「六連星(むつらぼし)」第66話~70話

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連載小説「六連星(むつらぼし)」第70話 
「くるみ浦の思い出」

 山本が、布団から起き上がる気配を見せる。
背後へ回った響が、山本の痩せた背中へ両手を添える。
背中には、肉の感触はまったく無い。
ごつごつとした痩せた骨の手ごたえだけが、響の手のひらに伝わって来る。

(こんなにやせ細ってしまうなんて。これってまさに、骨と皮だけの感触です)

 響が山本の病気の重さを、自分の手のひらで実感する。
起き上がった山本が寒そうな素振りで、浴衣の襟を掻き合わせる。
丹前を引き寄せた響が、背後から山本へ羽織らせる。

 「私が死んだあと、生まれ故郷の若狭の海へ、私の骨を播いてほしいのです。
 私が生まれたのは、若狭湾に面している小さな古びた田舎町です。
 日本で最初に造られた原子力発電所、関西電力の『美浜発電所』があります。
 福井県三方郡、美浜町丹生。そこが私の生まれた場所です。
 1961年10月。原発建設のための候補地のひとつとして、推薦をされました。
 翌年の1962年、日本最初の発電所の建設が、わたしの美浜町に決まりました。
 その年、私はその対岸に有る、常神半島の村で生まれました。」