連載小説「六連星(むつらぼし)」第66話~70話
連載小説「六連星(むつらぼし)」第69話
「内部被ばくのはなし」
「響の二部式の着物に、まず乾杯しょう。
響が着物を着ると、お前さんの若いころを思い出させるほど、妙に美しい。
いやいや・・・・別に欲情的な意味で言っているわけじゃねぇ。
健康な、日本風の色気を感じると言う意味だ。
まったく。今時の女どもときたら、なんでこんなにも日本的で美しい衣装を
敬遠するように、なっちまったんだろう。
実に、嘆かわしいことだ。まったくもって」
「日々の暮らしが、洋式になりすぎた結果です。
早く歩くには不便だし、車を運転するにも着物は不向きだもの。
パパッと動くためには、スカートやズボンのほうがよっぽど、楽です。
今はあらたまった席でなければ、着物は着ません。
たいていが、冠婚葬祭の時だけですねぇ、女が着物を着るのは・・・・」
「そうだよなぁ。
俺の女房も着物を持っているが、着たのを見たことがねぇ。
そういう意味でいけば、二部式を着始めた響は、希少価値のある、
大和撫子の一人に生まれ変わったのかもしれねぇな・・・・」
「生まれ変わった?
じゃあ聞きますけど、生まれ変わる前の響は、一体なんだったのさ」
「ジャジャ馬むすめだ。
知性も教養も持っているくせに、大人たちには妙に反抗的だった。
口のききかたにも、粗野なものが有った。
だが、ジーンズから和服に変えただけで、最近はおしとやかに見えてきた。
馬子にも衣装と言うが、あいつの場合、的を得ている」
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」第66話~70話 作家名:落合順平