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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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しらない子

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 久美子が三年生の下駄箱の方へ行かないのをゆみはしっています。なぜって、そこは茂った木の枝が窓に覆い被さっていて昼間でも暗いうえ、ゆみがお化けの話をして脅かすので、恐がりの久美子は一人では行けないのです。
 走るのが苦手なはるかが、決まった範囲の中で一番遠い職員室の方まで行かないのもわかっています。ですから、ふたりとも真ん中の、柿の木から一番近い四年生の下駄箱を選ぶに決まっていました。
 ゆみが下駄箱のそばまで来たときです。
「きゃあ」
 久美子の悲鳴が聞こえました。ゆみが急いでいくと、四年二組の教室の前の廊下で久美子がはるかに抱きついてふるえていました。
「あっちの校舎に幽霊がいたって……」
 はるかが久美子の代わりに言いながら、中庭を挟んで建っている一年生の校舎を指さしました。一年二組の教室に白い人影が見えて、ピカッと光ったというのです。
 ゆみは(さっきの男の子かもしれない)と思いました。
「ようし、あたし、いってみる」
と言って、ゆみは歩き出しました。
この場所から一年生の教室に行くには、三年生の校舎のほうから回って行かなければなりません。
 昔の古い校舎なので、建物は学年ごとの棟になっていてそれぞれが渡り廊下でつながっているのです。この校舎はちょうど「コ」の字を逆にしたような形で建っていました。
 怖がる久美子を尻目に、ゆみはどんどん歩いて、三年生の校舎に入りました。
作品名:しらない子 作家名:せき あゆみ