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せき あゆみ
せき あゆみ
novelistID. 105
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しらない子

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6,写真

 九月も終わりに近いある日、廊下でゆみは土居先生に呼び止められました。
「ちょうどよかった。ほら、これ」
 先生から手渡されたのはあのときの写真です。それはみんなの分まで焼き増ししてありました。
「わあ、ありがとうございます」
 ゆみはすぐに教室に戻って四人の仲間に写真を渡しました。ところがゆみは自分のを見てぞっとしました。なんと、あの少年が写っていないのです。けれど、みんなは異変のあることなど気にもとめません。
 写真は柿の木を背にして、前列に俊介とゆみ、後列にはるか、裕太、久美子が並んでいます。写したときにはゆみの左側に少年がいたのです。
「ねえ、あの男の子、ここにいたはずなんだけど写ってないんだ」
 ところがゆみのこのことばに、みんなの方が怪訝な顔をしたのです。
「なにいってんだよ。あの日はおれたち5人だけだったじゃないか。おまえ、まだ暑さぼけか?」
 俊介のツッコミがはいりました。いつもならやりかえしますが、今日ばかりは何も言えません。ゆみはランドセルから袋を取り出して四人に見せました。
「これ、その子にもらったの」
「なあに? 柿の種?」
 久美子がくすっと鼻で笑いました。
「おまえ、狐かタヌキにでも化かされたんじゃないのか?」
 俊介と裕太は口をそろえていいます。
「そういえば、ここ、お墓があったところだって、土居先生が……」
と言うはるかのことばに、俊介が答えました。
「ああ、無縁仏のことだろ? この学校建てるとき、うちのひいじいちゃんが拝んだってきいたよ」
「やだ。そんなこと思い出さないでよ」
と、久美子が肩をすぼめました。
「いや。ひょっとすると幽霊かもな」
 おもしろがって裕太が言うと、久美子はせめるように言いました。
「ゆみちゃんは、お化けの話ばっかりするから罰が当たったのよ」
 ゆみは手のひらにのせた柿の種をながめていましたが、だんだん気味が悪くなってきました。そのとき、不意に俊介が柿の種をひったくりました。そして、
「こんなの捨ててやるよ」
と廊下に飛び出したのです。
「ちょ、ちょっと待って……」
 あわててゆみは追いかけましたが、間に合いませんでした。
 俊介は窓から裏の草むらに柿の種を捨ててしまったのです。そうして両手を合わせて拝むまねをしました。
「大丈夫だよ。おれが拝んでおいてやるから、たたられないよ」
「ばか!」
作品名:しらない子 作家名:せき あゆみ