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わたなべめぐみ
わたなべめぐみ
novelistID. 54639
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紫音の夜 1~3

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「願い事、そんなにたくさんできたの?」
「しまった、忘れてた」

 あまり残念そうな気配もなく、とぼけた応答に葉月は吹き出した。

「『ナイツ』っていうバンド名、ぴったりじゃない。真夜中の真夜、なんでしょ?」
「お笑いのコンビ名みたいでいやなんだよ。いいっていうなら、篠山さんが相方やってくれるの?」

 真夜の指先がわずかに動いた。
 葉月は指をからめて握り返した。

 「いいよ」と言いかけたその時、真夜が手をふりほどいて立ち上がった。

 「やめといた方がいい」

 吐きだされた言葉に耳を疑っていると、真夜は葉月から視線をそらしたままもう一度つぶやいた。

「やっぱりやめといた方がいいよ」

 今度は返事ができなかった。葉月の心はとっくに決まっていた。
 たとえ真夜や伶次の心変わりがあったとしても、身を引くつもりはなかった。
 土下座をしてでも、真夜の音色をもっとそばで聞きたいと思っていた。

 夜空の天盤に浮かぶ数限りない星々が、真夜の全身にふり落ちそうなほどに瞬いていた。