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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN3 腹に水銀

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「女が持っている写真を奪えと言われている。それだけだ! 人をばらしたなんて話は聞いてない!」
 三下が情報持っていないなんて当たり前か。ならもっと上を当たるか。
「お前らに指示を出したのは誰だ。藤崎さんじゃなきゃ、親分か?」
 また男達は顔を伏せた。面倒くせぇなぁ。
「お前らが話さないんなら親分とっ捕まえて聞くからいいんだぜ? まさか…… 俺達に出来ないとでも思ってるのか」
 俺の凄んだ声に合わせて三郎が男達を冷ややかに見た。たった今瞬時に叩きのめされたのだ。俺達を化け物くらいに思っているだろう。奴らは本当に怯えていた。
「違う、やめてくれ。坊ちゃんだ、坊ちゃんに頼まれた」
「坊ちゃん? ロイか」
 意外な名前だった。男達は三人とも頷いている。出任せで親分の息子を売れば誰か咎めそうだ。だが三人は真顔だった。
「坊ちゃんにまずい写真を撮られたから取返してくれと言われただけだ。子供のトラブルなんだよ、命取るとかそういうんじゃないんだ!」
 男はさらに「信じてくれ」と叫んだ。ふーむ……。
 三郎の顔を見ると「本当のようだな」って顔してやがった。そうなるとロイが犯人なのか? 奴をとっちめれば瞳さんの居場所もわかるのか? いや……。
「ロイは尋問したよな?」
 相棒を振り返ると面倒くさそうに頷いた。
「瞳さんたちの居場所は知らなかった。嘘はつかなかったはずだ」
 何故そう確信できるかは…… 聞かなくていいや。ロイに多少の同情を感じつつ。
「もううちに返したんだっけ」
「ああ、もう家の者が迎えに来たはずだ」
 家の人ってヤクザだよなー。
 俺の内心を察したのか相棒は淡々と続ける。
「俺たちはロイを保護しただけだ。感謝こそされ恨まれたりはしない」
 …… 本当か? まあ都合よく解釈しておこう。
「今はさちさんの保護が先だ。家に送ってあげるべきだが俺達も話を聞きたい。ひとまず会社に戻ろう」
 賛成だ。だが一つ問題はある。ヤクザどもは不法侵入で警察に持っていってもらうとして俺達の方だ。
 何度も言うけど俺のプジョー4人が限界なんだよな。

 三郎とさちさんはタクシーで会社に戻ってもらい俺達はプジョーで帰途に就こう…… としてちょっと寄り道することにした。
 松森中学校。リック、ロイそしてさちさんの学校だ。
 情報を収集、というか確認したいことがあったので寄ってみることにした。
 本来よそ者は入れないんだけど夏休みだし卒業生の振りでもすれば問題なく入れるだろう。
 それに俺が会いたい奴らは校舎の中にはいるまい。前回のピンフ学園と同じあたりに恐らく…… いた。
 俺はジュン達に少し待っているように伝えターゲットの連中に接近した。
 人が通らない校舎の裏、火のない所に煙を立てる連中。俺に気が付くと一瞬ドキリとしたがすぐに睨みつけてきやがった。
「なんだおめぇは」
 3人組の不良生徒たちは煙草を地面にこすりつけると立ち上がって近寄ってきた。
 本当にこの手の連中は皆同じ反応をしてくれるので助かる。
 俺はこいつらから情報を得なければならない。
 大丈夫、そういう術はいくつも心得ている。

 数分後、俺は連中の兄貴分の地位を得ていた。
 人から情報を得たい場合、相手が欲しい情報を与えギブアンドテイクの関係を構築する事。そして出来れば相手にとって俺が有用な人間、しかも尊敬に値する男であると認識させるのがベストだ。
 男子中学生の欲しい情報などいくらでも持っている。
 彼らの知らない事、つまり女性の神秘についてだ。
 よーするにY談だな。
 俺たちは地べたに円になって座り込んでしばらく話し込んでいた。
 連中は俺の話に熱心に耳を傾け、俺も極力丁寧に奴らの欲しい情報を語った。
「兄貴っ教えてくれ! 俺どうしてもわからないことがあるんだ!!」
一目で悪とわかる人相の男子中学生が少し前のめりになりながら俺に質問してきた。
 俺はつとめて冷静に「なんだ?」と返す。彼は必死の形相で話し始めた。
「男と女が向き合ってするのはわかるっ! 前と前だからっ! それでどうして後ろからもできるんだッ!!」
 魂の言葉に横にいた奴らも「おう、俺も疑問持ってた」と頷いていた。
 彼らを笑ってはいけない。彼らはまだ人間としての経験値が少なく知らないだけだ。
 俺もほんの数年前まではそうだった。
 俺はゆっくりと頷きながら答えた。
「なるほど…… いい質問だ。だが一つ勘違いをしているようだ」
「勘違い?!」
 中坊の顔がさらに接近してきた。真実を知りたい、そういう真摯な表情だった。
「俺達男は前についているが、女はな」
 ここで一瞬の間。
「下についているんだ!」
「下に?!」
 雷の直撃を受けた、あるいは万有引力の法則に気が付いたニュートンのようなリアクションだった。
「まだ?」
 そこに絶妙のタイミングでジュンが来てしまった。
 今日の服装はミニスカートである。
 全員の視線が一斉に下へ移動する。
 ブッという鉄板の擬音と共に一人が鼻血を噴き出した。
「なに?! どうしたの?」
 困惑するジュンに俺は首を振って「放っておいてやれ」と告げた。
 まあ、たまによくあることさ。

 ジュンたちをまた追っ払って、三人の舎弟からこちらが欲しかった情報を得て俺は少々の小遣いを渡して別れを告げた。
 それで動画サイトでも見て勉強するんだぞ。
 立ち去ろうとして俺は振り返り最後にもう一つだけ奴らに告げた。
「お前ら、おっぱいは大きさじゃない、形だ!」
「兄貴!」
 俺たちは固い握手を交わして別れた。

 車で待っていたリックはちょっと不機嫌だった。
 というより焦っている、が正しいようだ。
「なんでこんな所に寄るんですか、早くあの子から話を聞きましょう!」
 折角ジュンと二人きりにさせてやったのに。少しは感謝してほしいものだ。
「どうしても確認したいことがあってな。そう焦るな、うちはすぐそこだ」
 俺達はプジョーに乗り込み我が社BIG-GUNに向かった。
 
 会社地下駐車場に車を停め地上階に上がると会社はクローズになっており一同は一階応接間にいた。
 真夏だが暖かいミルクティーの香りがした。
 おそらくジムが入れたものだろう。俺ももらったことがある。気持ちを落ち着かせるには最適な飲み物だろう。
 ジムと三郎に見守られさちがオズオズとそれに口を付けていた。
 ほんのり頬が赤いのは紅茶の熱さのためか、それとも。
 俺達は驚かせないように声をかけてからゆっくり部屋に入った。「落ち着いた?」と問いかけると意外にはっきりと「はい」と答えてくれた。
 三郎に話は聞けたか聞いてみるとまだのようだった。まあ仕方ないな。
 俺が話しかけようとしたら三郎が片手を上げて止め無言でジムに振った。ジムは頷いた。
 ふむ、ジムの方が話しやすいかもな。
「こんな時にすまないけど、僕らは黒沢瞳さんとそのお兄さんを探さなければならないんだ。特に瞳さんには危険が迫っているかもしれない。助け出したい。何があったか話してくれないか?」
 とても柔らかい人を安心させる話し方だった。
 芝居をしているのではなく自然にこういう風に接しられるところがジムの凄い所だ。