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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN3 腹に水銀

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 切り際にジェニーは兄貴からの伝言で大道組と話はついたことと奴らに関する情報を教えてくれた。元々そっちが本題だったのだろう。面倒くさいな女ってのは。
「風見さん、他にも彼女いるんですか?」
 リックが後ろから話しかけてきた。本当に女の話だけは食いつくな。
 返事はジュンがした。
「いるのよ、高校生のものすごい美人が。ほっとくなんて何様のつもりかしらねー」
 お前、なんか棘があるな。お前に実害のある話じゃ無いだろ。
「二股はよくないですよ」
 リックの野郎、真に受けて詰め寄るように言いやがった。
 二股なんかかけてねぇ! あ、隣で三郎がウンウン頷いてやがる。お前にだけは言われたくないぞ。俺が二股ならお前は何股なんだ。イカの足でも足りねーだろ。
 どうでもいい会話をしていたらプジョーはモチキそばのマンションに到着した。駅の近くだからコインパーキングは側にある。とっとと行こう。駐車料金がかさむ。
 鍵は借りっぱなしになっているので中には簡単に入れる。ゾロゾロ見知らぬ人間が入ってきたのでさすがに管理人がギョッとした顔をしたので「鍵社長に調査を依頼された者です」と名乗った。話は通っていたようで、すんなり通してくれた。とは言え女子供が大勢でやってくるとは予想外だったろう。ちょっと怪訝そうな表情だった。昼来た時にちゃんと挨拶しとけばよかった。ふむ、ついでだ。
「我々の他に見かけない人は入ってきませんでしたか?」
 返答はイエスだった。だがもう帰ったらしい。
 物を手に入れたのか、それとも一端引き上げたのか。
 とりあえず急いで行動した方がよさそうだ。俺は相棒に目配せした。
 即座に三郎はエレベーターに乗った。俺は、しょーがねー階段を駆け上がる。すれ違うわけに行かないからな。ジュン達には管理人室で待つように言ったのだがリックはついてきやがった。まぁ予想の範囲内。
 エレベーターより1秒速く3階に到着した。ふ、勝った。
 ここからは足音を消し声も立てずに進む。ドアの前に立ち、二人を待たせ音も無く鍵を開ける。俺達は部屋に進入した。
 息を殺し中へ進む。
 いる。気配がある。なによりわかりやすいのは部屋が涼しい。さっき来たときは蒸し風呂だった。今室内は涼しい。あの後誰か来て冷房を使った証拠だ。目をやるとエアコンは動いていない。冷気は別の部屋から漏れているのか。黒沢さんが帰ってきている? そんなはずはない。黒沢さんなら侵入者に気づかないはずは無いし、自宅への侵入者に対し息を殺して隠れていることは無いだろう。
 キッチン、リビング、ユニットバスにはいない。となると…… さっき開かなかった瞳の部屋か。ノブに手をかけると鍵はまだかかっていた。中からかけてあるのだろう。こんな鍵あけるのはわけない。キーホルダーにつけてあるキーピックを取り出そうとすると三郎がすでに自前のツールを取り出していて俺を押しのけた。ち、譲ってやらあ。
 2秒で鍵は開いた。
 三郎は愛用のS&Wを抜いてからドアをそっと開けた。
 いた。
 部屋は女の子っぽい明るい壁やカーテンで彩られた六畳間だった。ベッドとパソコンデスクがあるため中はけして広くない。そのベッドとデスクの間に小さくなって震えている者がいた。
 大人じゃ無い。枕を抱きしめてうずくまっているから顔は見えないが女の子だろう。
「瞳さんか?」
 俺の前では絶対発しない優しい声で三郎が問いかけた。
「違う」
 背後から声がした。リックだ。
俺もなんとなくわかっていた。髪の色が違う。瞳は黒髪のはずだが、この子の髪の色は少し赤っぽかった。女の子は震えながら顔をあげた。会った事のある顔。実際に一度会っているが、それ以上に知っている印象がある。彼女に似ているヤツを知っているからだ。
「森野さち…… さんだね?」
 三郎はS&Wをしまいながら言った。さちは三郎を見上げた。その瞳が大きく広がっていった。
「心配ない。俺達は味方だ」
 三郎は手を差し出した。さちは一瞬の間のあと、2回頷いてその手を取った。
 立てるか? と声をかけながらゆっくりと立ち上がらせる。
「妹さんに頼まれて助けに来た。もう大丈夫だ」
 その言葉を聴くとさちは安心したのか大声で泣き出し三郎の肩に頭を埋めた。
 無理も無い。恐らくおっかないヤクザが現れると思っていたのだろう。そこに三郎みたいな男前が現れて優しくされれば、どんな子だってこうなる。
 それにしても…… 女の子の肩はこうやって抱くものなのか。毎回参考になるなぁ。
 落ち着いたら話を聞くか…… などと考えていたら俺の電話が鳴った。

 部屋を出るとおっかない顔をしたお兄さんたちが隣の部屋に入るところだった。足音からして靴を脱いでいるとは思えなかった。3人いたが二人が入り一人は残って門番のようにドアの前に立った。
 驚く俺の顔を見ると男はジロリと睨みつけ「とっとと行け」とばかりに顎をしゃくった。怖いねぇ。
 俺は「どうもどうも」と愛想笑いしながら小さくなりながら足早に男の前を通り過ぎた。
 振りをして俺は振り返らずに拳を振るった。
 裏拳は距離感ぴったり男のこめかみに叩き込まれ瞬時に昏倒させた。
 男が倒れるのを捕まえて音を立てないようにする。
 三郎が音も無く部屋から出てきた。風のように俺と倒れた男の脇をすり抜け男達が入った部屋に入っていく。2対1。加勢はいるまい。
 怒号と暴れる物音がしばし聞こえ静かになった。
 そして三郎は息も切らさず部屋から顔を出し「済んだ」と告げ中に入るよう促した。
 俺は通路に倒れた男の首根っこを掴み男達が入っていった「黒沢さんの部屋」に入った。
 さっきの電話はジュンからだった。怖そうな人たちが管理人を脅して入っていったとの通報だった。
 怪しい奴らがまた追ってきているのは気づいていた。ジュンを管理人室に残したのはそのためだ。見張り兼単純に避難だ。
 俺達は通報を受け、たまたま留守だった隣の部屋に隠れた。鍵はまた三郎が瞬時に開けた。
 三郎を連れてきてよかった。仕事が楽になる。
 俺達は男らを並べて尋問を開始した。
「大道組の連中だな」
 質問は無視された。が、構うことは無い。続ける。
「藤崎って人の命令か?」
 これに若い奴が首を振った。
「違う藤崎さんは関係ない」
 こいつも藤崎に世話になった事があるのだろう。嘘はついていなさそうだ。しかしこれでこいつらが大道組の者と確認できた。間抜けな奴だ。
「単刀直入に聞こう。アーノルド・ディモンド、ラギエン通りのイタ飯屋で駅前の地主を殺したのは誰だ」
 男達は顔を見合わせて「知らない」と言い出した。
 ふうむ。
 相棒の顔を見る。
「意見を聞こう」
 俺の質問に三郎は面倒くさそうに答えた。
「二人殺せば残った奴がしゃべるんじゃないか?」
 三人の血の気が引いた。俺は「なるほど」とベレッタを引き抜いて男達に向けた。
 男達は悲鳴を上げて「本当に知らない」と喚きだした。
 床のほうから何か音がして悪臭がしだした。
 あ、この野郎もらしやがった。黒沢さんの部屋で。
「知らないようだな。信じよう。だが何故俺達を追ってこの部屋まで来た。襲うつもりなら外でよかったはず。探し物か?」
 男らは今度は頷いた。