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ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
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便利屋BIG-GUN3 腹に水銀

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 ヤクザ共が気づく前に身を隠せる場所に移動する必要がある。さもないとマシンガンの斉射であっという間に蜂の巣だ。幸いここは起伏のある地形な上、アスレチックの器具やら大木やらがある。逃げ道も山に入ればいくらでも存在する。
「風見さん銃を返してください」
リックが後ろから話しかけてきた。焦った声だった。
「駄目だ」
 俺は振り返りもせず答えた。マシンガン相手にスタンガンが役に立つか。
 ヤクザたちがU字を歩いてきた。俺は素早く草むらに伏せる。
 しかしリックはもたついた。バカ。
 手を伸ばして伏せさせたが遅かった。先頭にいたやつがこっちを指さしてなにやら怒鳴った。
 威嚇のつもりか一発撃ちやがった。そしてそのままこっちに走ってくる。俺も一発足元に威嚇射撃した。男は一瞬飛びのいたがまだ突っ込んでくる。猪か。
 今度は足に撃ち込んでやった。もんどりうって転倒する。猪男を止めるだけでなくあとから来た奴らも足止めすることが出来た。3人とも俺達と同じように草むらに伏せた。
 苦し紛れかマシンガンの男が弾丸をばら撒いた。弾は俺達の頭上はるか上を通過していった。
「殺す気か」
 リックが震えながらうめいた。
 まぁでもなきゃマシンガンなんか持ってこないな。
 こっちが隠れている草むらとあっちの草むらまで50mくらいか。俺のベレッタは中型拳銃だ。火力的にやや不利な距離だ。後ろに下がって逃げるのもやや危険が伴う。俺一人ならいけると思うがリックまでいるとなるとやばいか。
 ところで奴らの狙いは?
 さっきのヤクザみたいにこの事件から手を引かせることか。ぼっちゃん取り押さえて口を割らせたことに対する復讐か。
 もうひとつ。何故ここが? 俺の電話を傍受でもしたというのか。
 考えていたら突然ヤクザが一人痺れを切らせて立ち上がり拳銃を乱射した。
 俺の方もちょっと驚いたが体は反射的に反応し1発でそいつを撃ち殺した。
 ど素人か、こいつら。この街のヤクザも質が落ちたものだ。
 一人失いやつらは草むらから全く動かなくなった。何しにきたんだ。俺達を殺しにきたんじゃ無いのか……。
 さて…… 素人のやー公相手にもたもたしているわけにいかんな。まずはマシンガンのヤツを始末しねーとな……。
 リックに地面に顔擦り付けているように指示し俺は匍匐のまま後退する。奴らに気づかれないよう狙撃できる位置に移動しなければ。数m下がってヤクザと完全に視線が切れた。というかヤクザどもから俺の位置が見えていたか怪しい。山の高低を利用して身を隠しながら奴らの横へ移動しよう。
 と、そこで電話が震えた。こいつは……。
「てこずっている様だな。援護はいるか」
 援軍だった。ジムが来るかと思ったが三郎のほうだった。ヤクザの皆さん、お気の毒。
 状況を把握しているという事は恐らく駐車場から上がってきた辺りにいるのだろう。つまりやつらの後ろにいるという事だ。おいしいところは持っていかれそうだ。
「てこずっちゃいないが面倒くさい。片付けろ」
 俺の指示にヤツの方が面倒くさそうに返事した。
「全部殺していいのか」
「この街に必要な奴らか?」
 俺の冷たい声にヤツは冷めた声で返した。
「知るか、まぁ俺には必要ない奴らだな」
 ならいいんじゃね。と、指示を出した瞬間銃声は轟いた。ヤクザどもの動揺がこちらにも聞いて取れた。
 即座に銃を出して俺も射撃に入ろうとした。だが遅かった。俺の瞳に後ろを振り返っている男たちの姿が映った時、間をおかない連射によって奴らは簡単に始末されていた。
 相変わらずものすげー射撃能力だ。技術だけなら練習で身につくが的は一応生きた人間だ。躊躇無く撃つのは抵抗があるものなんだが。
 ま、相手はヤクザだ。子ども相手にマシンガン持ち出すような奴らに遠慮は要らないってことか。
 俺は間違って撃たれないよう大声で合図してから三郎と合流した。
 間違った振りして撃たれたら洒落にならんからな。

 俺達は一端会社BIG-GUNに戻って状況を整理する事にした。
 リックの野郎は今しがたの銃撃戦で肝がつぶれたか押し黙ったままだ。
 会社のロビーに着くとジムとジュンが出迎えてくれた。ジュンのやつはいつまでいる気だ? 危ないからとっとと帰って欲しいんだが。
 リックは車から降りるのもふらついていたがジュンが近づいて声をかけると幾分しゃんとしてソファーまで移動した。本当にこの野郎は見た目より女好きと見える。まぁこいつの歳では仕方ないか。
 おっと、俺だって歳は変わらない。
 はー疲れた、仕事した。とソファに埋もれたらジュンちゃんが声をかけてくれた。
「何わざとらしい事言ってんのよ」
 冷たい。見ず知らずの男には優しい言葉をかけるのに何故俺には氷属性なのだろう。
「さて、話をまとめてみようか」
 ジムが全員分のコーヒーをいれながら切り出してくれた。部屋を包み込む香しい香りのように感じのいい男。それがジムだ。
 事件1、鍵さんの側近黒沢さんが突然退職、姿を消した。このため鍵さんは俺達に捜索を依頼して来た。失踪の原因は黒沢さんの妹、瞳のこれまた失踪が考えられる。
 瞳は何故失踪したか。これはリックの父親の死と関係がありそうだ。リックの父アーノルドは駅前の地主だった。その土地が都市開発計画に引っかかり売買でヤクザ・大道組とトラブルが発生した。アーノルドはヤクザに自殺に見せかけて殺害されたようだ。自殺に向かっているはずの車にヤクザも同乗していたところを瞳が目撃した。瞳は口封じのためヤクザに追われている。そのために姿を隠した…… あるいは既に……。黒沢さんは妹の身を案じ探しているという事だ。
 事件2、森野めぐみの姉さちの失踪。全く関係ないと思っていたこの事件だが、さちが瞳の友人であったことから絡んでいるようだ。瞳は直接ヤクザと接触しただけでなく証拠となる写真も持っていたようだ。考えてみれば証拠がなければヤクザも子供なんか相手にしないだろう。
 写真を撮ったのはさち。新聞部の記者だからカメラを持ち歩いていても不思議ではない。瞳の彼氏の写真を撮るとか言っていたらしいから偶然瞳とあった人間の写真も取ってしまったのだろう。それが殺人犯のヤクザとは……。好奇心は猫を殺すとはよく言ったものだ。
「さちとはどこで会ったんだっけ」
 三郎が問いかけてきた。ジムの淹れてくれたコーヒーに口をつけるどころかソファにも座らず壁にもたれていた。リックがいるせいだろう。こいつは俺より人見知りだ。俺並にY談と藤子先生の話題を駆使できれば友達も増えるだろうに。今度エスパー魔美貸してやろうか?
 それはさておき。
「黒沢さんのマンションだ。瞳さんに会いに来たんだろう」
「何故そう思った」
「黒沢さんの部屋の前にいたし、めぐみが友達だったと言ってたんでな」
 ん?
「おかしいじゃないか」
 三郎の野郎は気がついていたようだ。確かにおかしい。
「さちはどうやってそこにいた?」