小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
ろーたす・るとす
ろーたす・るとす
novelistID. 52985
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

便利屋BIG-GUN3 腹に水銀

INDEX|12ページ/22ページ|

次のページ前のページ
 

 リックの返事が少し明るくなった。よかった、こいつも一応男らしい。
「ちゃうけど」
「でも仲良かったですよ?」
 たこ焼き一個もらえない程度の仲だがな。リックは俺の返事を待たず続けた。
「可愛い人ですね。気も利くし」
「ああパー子さんにはまだ負けるがな」
「パー子さん? 3号のほうですか?」
 俺の投げやりな返事にヤツはトーンを上げた。
「当たり前だろ。ここでピンクのおばさんを引き合いに出してどうする。パー子さんはしずちゃんと並んで藤子ヒロインの双璧だぞ」
 呆れて口をつぐむかと思ったが、奴は深く頷き「たしかに」とつぶやきやがった。そしてやや熱くこう語った。
「でもみきおとミキオのマリコさんも捨てがたいです」
 こ、こいつ!
 俺は思わず振り返った。
 わかってやがる!
 それにしても。
「女の事になったら饒舌になったな」
「そ、そんなことは」
 ヤツは目を反らした。俺は笑って顔を前に戻した。
「まぁ、いいんじゃないか」
「どこに向かってるんですか」
 話を変えやがった。Y談駄目なタイプか。
「市民の村だ」
 この山の中にある公園で森の中に簡単なアスレチックがある。最近は人も少なくなっていて一時隠れるのには都合がいい。
 田舎のさらに田舎道。他所の人では解らない山の斜面に市民の村はある。駐車場も無料。遊具も入場料も無料。要するに街中にある公園と扱いはほぼ変わらない。平日とはいえ夏休みだからそれなりに人がいるかと思ったが俺達意外には誰もいなかった。助かる。入り口付近のトイレ脇で水分補給し、へたりこむリックを無視して会社に電話した。公衆電話がここにはまだある。すばやくジムが出た。
「ジュンちゃんから話は聞いた。まだリックと一緒なのか?」
「ああ、警察は俺を追っているか?」
「いや、リックは探しているがお前と一緒とは知らないようだ。ここにも連絡はきてない」
 ふむ…… 俺はパトカーを見たがパトカーから俺の姿は確認できなかったというわけか。なら携帯オン。ウィリアムさんは警察に質問くらいされただろうが隠してくれたのか。さすが出来た人だ。足向けて寝られんな。いやそうすると北枕になるな。
 俺は現在得ている情報をジムに告げた。
「黒沢さんと組んでその子に話をさせればよかったんじゃないか?」
「そうすると黒沢さんが犯罪者になりかねない勢いだったんでな。それじゃ契約違反になっちまう」
 ジムの苦笑が聞こえた。
「あいかわらず義理堅いヤツだな」
 さすがジム、三郎なら「めんどくさいヤツ」と言うに違いない。
「森野はどうした?」
「お姉さんを探してくれとの事だったから引き受けた。黒沢さんと関わっていたとはな。こっちも急ぎ見つけないとやばいと思うぞ」
 結局引き受けることになったか。まかせとけ森野。ただし友達料金にはならないからな。
「警察が俺を捜してないなら迎えに来てくれ。今市民の村にいる」
「わかった。それと森野さちさんの方でもう一つ情報がある。西方寺にいたもう一人の子何だが」
 ああヤクザのガキのロイか。
「三郎が捕まえて色々質問した」
 ああ、かわいそうに。
「大体リックの情報と同じだが追加でもう一つある。瞳さんは事件の真相に友達の写真で気づいたらしい。ヤクザどもはその証拠写真を抑えるために瞳さんとその友達を追っているようだ」
 友達と言うのは多分。
「容姿の特徴からして、さちさんで間違いない」
 やれやれ仕事が増えてきた。
 さちさんはまだ写真を持っているのだろうか? どこかに隠したかもしれない。
「風見さん」
 リックに呼ばれて振り返った。
「携帯使えるなら貸してもらえませんか? 姉に連絡しておきたいんです」
 真摯な表情だった。確かにアリアさんも心配しているだろう。
「いいだろう、無事って事と俺と一緒だって事だけ伝えろ。余計な事を話すとお姉さんまで巻き込まれるぞ」
 携帯を渡すと頷いてボタンを押し始めた。アリアさんに俺に助けられた事を言い忘れるなよ。重要なところだからな!
 ジムとの会話に戻る。
「森野は心当たりは何か言ってなかったか? さちさんの居場所でも写真のことでも」
「詳しい事は何も知らないようだ。いなくなる直前友達が行方不明だから探してくると言っていたらしい」
「新聞記者みたいなことを」
「その通り、さちさんも新聞部員だ」
 やれやれ。
「それ以前何をしていたかはわからないか?」
「特に変わった事はなかったらしい。友達に彼氏ができたらしいから証拠写真を撮るとか言ってたそうだ」
 それが普通の会話なのか。妹と変わらん。
 救出するテンションが下がっていくのを堪え、俺は電話を切った。リックも電話を終えたところのようだ。姉貴に甘ったれていたところを他人に見せるのは恥ずかしかったのかちょっと離れたところで電話していた。
 迎えが来るまで公園内で待つことにした。
 駐車場はアスファルトがしかれ炎天下では突っ立っているだけでもしんどい。公園はここからちょっと歩いた山の上にあり森の中なので幾分涼しい。人目も遮る事が出来る。
 園内には簡単なアスレチック施設とツリーハウスがある。
 ツリーハウスを知らない? 木の上に作った家のことだ。これを見てキタローと言うかハックルベリーと言うかで年代が解る。
…… いや、どっちも古いか。
 施設は山の起伏をそのまま利用しているため平坦では無い。U字型に高いところがあり真ん中はかなりくぼんでいる。駐車場から上がってくるとUの先端辺りの高いところに出てくる。反対側の先端にツリーハウスがある。アスレチックやベンチなどはその他の場所にてんでんと設置されている。森のため日差しはほとんど照りつけてはいなかった。助かる。 
 俺達はせっかくなのでツリーハウスに登って一息ついた。
 森の中な上、2mほど高い所にあるため風通しがよく気持ちがいい。中は2畳位しかないが二人が足を伸ばすには十分だった。
 歩いてしんどいのか、こいつも人見知りなのか、また押し黙ったリックに俺は話しかけた。今は情報が欲しい。
「瞳さんだが、居場所に心当たりは無いのか?」
 リックは力なく首を振った。
「そんなに付き合いがあったわけじゃ無いので。実は今の自宅も知らないんです」
 ふむふむ片思いのおねーさんということですか。
「今は寮住まいだ。自宅にはさっきの怖いおにーさんがいる。近づかないことだな」
「自宅知ってるんですか?」
 また食いついてきた。女の事だと食いつくなぁ。俺も人のことは言えんが……。まぁ健康なことで。
「さっき行ってみたがいなかった」
 リックは引かなかった。
「僕も直接行ってみたいです。場所を教えてください」
 切羽詰った感じだ。そんなに惚れてるんだろうか。しかし…… 待て。
 俺がリックに質問しようとした時、下の駐車場の方からエンジン音がした。ジムだろうか。
 窓から窺うと…… 違う。銃を持った男達が4人稜線を越えてきた。一人はマシンガンまで持ち出している。
「おりろ、敵だ」
 俺は極めて冷静な声で告げツリーハウスから飛び降りた。大した高さじゃ無いし下は土だ。3点着地で華麗に降りる。リックはさすがに無理ではしごで降りてきた。