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連載小説「六連星(むつらぼし)」第61話~65話

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連載小説「六連星(むつらぼし)」第63話
「伝統的建造物群・保存地区」

 窓の外から小鳥たちの声が、いつにもまして賑やかに響いてくる。
いつもより温かい朝の気配を感じながら、響が布団の中で目を覚ます。
昨夜は『那須のすっぴん美人』と数度のメールのやりとりをしていたため、
最近の響にしては珍しく、夜更かしなどをしている。

 差し込んでくる日差しに誘われて、響が思い切りよくカーテンを開ける。
「えいっ」ばかりに、窓を全開に開け放つ。
いままで寝ていた布団を、手すりいっぱいに広げてしまう。
布団を干し終えた響が、手すりに両手を突いて、身体全体を空中へ乗り出す。

 ぐるりと頭を回すとすぐ横に、真近に迫ってくる山の様子が克明に見える。
山肌を埋め尽くすように、柔らかい新芽と若葉が朝日に輝いている。
(春が来たんだ。気持ちよく新芽が萌える季節が、桐生へやってきたんだ!)
あわてて着替えを終えた響が、急いで階段を駆けおりていく。

 「あれ・・・・お茶当番が、やっと起きてきたようだ。
 もうすこし早く起きてくれれば響のいれる、まろやかなお茶が呑めたのに。
 春眠、暁を覚えずとは、よく言ったものだ」

 すでに朝食を済ませている俊彦と山本が、食卓から振り返る。
(あ、まずい。起きたばかりで、髪も寝癖のままでくしゃくしゃだ・・・
だいいち。今朝のわたしはすっぴんのままだ)
「おはよう」の挨拶を省略した響が、二人に顔を隠したまま、
ぺこりと頭を下げただけで、洗面所へ駆け抜けていく。

「ごめんなさい。あとで美味しいお茶をいれますので、少々お待ちください」