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連載小説「六連星(むつらぼし)」第61話~65話

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 手帳を発行した中部プラントサービスの原子力部の担当部長は
「訂正にはやむを得ない部分があった」と当時のいきさつについて
説明している。
「健康診断であえて作業従事可と書いたのは、本人に病名を
悟らせないための配慮である」
と部下から聞いている、と語っている。
線量の訂正は、手で書き込むために起きた誤記や単純ミスによるものだと言い、
現在は機械で打ち込むため、そういうミスは起らないと
平然と言い切っている。


 しかし18歳から原発の炉心の下で働き始めたこの青年は、
わずか8年間のうちに白血病を発症し、わずか2年余りの闘病生活を経て、
29歳で生涯を閉じてしまった。
こうした不条理な構図は、現在も温存されたままだ。
不具合な情報は常に小出しにしながら、実態を明かさず、
周囲を欺(あざむ)き続けてきた
日本の原発は、生まれた時から数々の秘密を内包してきた。



 日本の原発には、公表されていない秘密が多すぎます・・・
疲れた表情を見せて山本がようやく、原発で働いた青年の話を締めくくる。
山本の話が一区切りした瞬間、響は、『なすいちのすっぴんびじん』を名乗る
亜希子からのメールを、思い出していた・・・・

 「響ちゃんへ。
 広野町のレポート、興味深く拝見いたしました。

 東北の3県は、東日本大震災の津波から逃げまどうなか、
 さらに東京電力福島第一原発が、被災者たちに追い打ちをかけました。
 あれから一年。
 福島県の約16万人は、今も我が家に帰れません。
 政府に事実を隠され、被ばくの恐怖にさらされたまま、
 放射能による、いわれなき差別に遭っています。
 ようやく踏みだした「脱原発」ですが、
 第一原発の廃炉までは、これから30年以上もかかります。
 子どもたちは、負の遺産を背負いながら、長い時間をかけて、
 ひたすら少しずつ前へすすまなければなりません
 がんばれ、福島。
 がんばれ、福島のこどもたち。

 そして、がんばった響へ。
 あなたが最大限の勇気を持って、広野の町を見届けてきたことを、
 友人のひとりとして、心から誇りに思います。
 誰かが、被爆の真実の記録を残さなければなりません。
 福島が身をもって白日のもとに晒した、あの理不尽な原発の嘘を。
 事実をひた隠しにして、復興への道のりを遠いものに変えている政府の姿を。
 誰かが未来のために、この記録を残さなければなりません・・・・
 誇りと、勇気と、怒りを持って、日本という国がおかした大きなあやまちを、
 歴史の一大教訓として、後世にしっかりと、語り伝えなければなりません」