小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

連載小説「六連星(むつらぼし)」第61話~65話

INDEX|3ページ/15ページ|

次のページ前のページ
 
 

 工業高校を卒業した青年は、中部電力(名古屋市)の原発や
火力発電所の保守、点検を請け負う、孫請けの会社へ就職をする。
入社後、すぐに浜岡原発へ派遣されるようになる。
原子炉内の状態を把握する、計測機器などを交換する仕事につく。
数か月後。原子炉内の中性子密度を監視する計測装置、「核計装」の
専任になる。

 「核計装」は、原子炉の運転状況を把握するために、とくに重要な装置だ。
浜岡原発の場合は、炉の下から装置を原子炉内に挿入する。
原子炉内の運転を制御のために、常に温度や圧力、水の流量や水位などの
状態を常に把握をする必要が有る。
これらの計器は、経過を監視すると言う意味で「プロセス計装」
と呼ばれている。

 また、停止していた原子炉は、停止状態から起動して全出力運転に
達するまでを数値的に、正確に見守る必要がある。
そのために炉心内の核分裂状態を監視するための、特別な機器が装着される。
それが『核計装』と呼ばれる、特殊な設備だ。
原子炉の天文学的な出力に対し、高速でそれに応答しながら8~10桁以上の
計測を可能にするという、特徴をもっている。


 新人として核計装に回された青年は、原子炉の定期検査時に、
炉心の下へもぐり込み、装置を取り外し、故障の有無を調べる仕事を任された。


 「原子炉の周囲には、大量の配管と配線が複雑に配置されています。
 炉の真下には、制御棒を動かすための配管が多数がぶら下がっています。
 作業するスペースは、直径4,5メートル、高さ1,5メートルの狭い空間です。
 狭い場所なので事前に実物大の模型を使い、何度も訓練を繰り返します。
 原子炉の直下ですので、配管が密集をしていて、立ちあがる事も出来ません。
 身をかがめたまま、しゃがみこんで作業をしなければなりません。
 炉心の下は線量が高すぎるため、被ばく線量を決めて短時間のうちに、
 作業を終えなければなりません。
 無駄な被ばくを、防ぐためです。
 当然、青年もそのような対策をしていたはずです」

 青年が作業するのは、格納容器の真下と炉心の内部だ。
格納容器の内部には、常になま温かい空気が流れこみ、溶接の火花が
あちこちで飛ぶ。
原子炉直下にある入り口は、1メートル四方とすこぶる狭い。
放射能汚染を防ぐために、黄色い防護服を着込んだ数人が同じように、
身体をかがめて、出入り口を忙しく往復する。


 「原発は、コントロール室のコンピューターできわめて安全に,
制御されてるいるような印象があります。
 実際には事故を起こさないために、最も大切とされる整備や検査の部門が
 平然と、外部の下請け会社の丸投げされています。
 使い捨ての原発労働者たちを動員することで、原発は動いているのです。
 下請け作業員を頼らなければ、原発はひと時も動きません。
 自分の仕事の責任を果たすため、誇りを持って働いている下請けの
 人たちこそが、 実は長い間にわたり、常に、
 被ばくと対峙をしているのです」

 青年は入社して数年後に、それまでの努力が報われて技術主任に昇格をする。
当然のなりゆきとして、青年はさらに率先して原子炉の下へ潜り込んで行くことになる。
放射線量の高い区域で多くの経験を蓄積していった結果、
青年の累積被ばく量は、急激に増えていくことになる・・・・