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連載小説「六連星(むつらぼし)」第61話~65話

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連載小説「六連星(むつらぼし)」第65話
「二部式の着物」

 桜とチューリップが美しい競演を見せる、吾妻公園の斜面の最上部には、
亜熱帯の植物を展示をしている、ガラスの温室がある。
日中に限り、自由に出入りが出来る。
うららかな春の外気でも、内部はすでに亜熱帯どころか、
熱帯状態になっている。


 内部を一回りして、南国の鮮やかな原色の花たちを満喫した山本が、
出入り口の前に有るベンチへ、汗をぬぐいながら腰をおろす。
高台からは、公園の全域が見降ろせる。
可愛い会話を交わしていた保育園の子供たちも、すでに写生を終えて、
来た時よりもはるかに賑やかに、一斉に帰りの支度に取り掛かっている・・・・
響が自動販売機から、冷たい缶コーヒーを買ってきた。

 「大丈夫ですか。ずいぶんと歩きましたもの。
 コーヒーでも呑みながら、ひと休みしましょう。
 少しくらいのんびりしても、この景色も、この暖かさも逃げていきません」


 「確かに。陽気につられて、歩きすぎました。
 子供たちからも元気をもらいましたから、ついつい欲が出たんでしょう。
 ・・・できればこの足で、もうひとつだけ、
 見ておきたい建物が有るのですが、この近くに有るのでしょうか」