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連載小説「六連星(むつらぼし)」第61話~65話

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 子供たちが、口々に挨拶をしながら元気に通り過ぎていく。
中にはニッコリと、とびきりの笑顔をプレゼントをしてくれる子もいる。
笑顔の様子に山本が事のほか、目を細めて喜ぶ。
愛想の良い保母さんに引率をされた黄色い一団は、最後の急坂に向かう。
ひときわ高いさえずりの声をあげて、ひょこひょこと坂道を遠去かっていく。


 「楽しい事と奇跡がいくつ重なったのか、もう解らなくなってきました。
 ここは、楽しい事があふれている公園ですねぇ。
 やっぱりここまで歩いてきて良かった・・・・
 人には元気が一番です。
 春の景色と、子供たちの明るい笑顔に、たくさん元気をもらいました。
 やはり元気でいられるということは、実にありがたい・・・・」

 花壇のひとつずつを、ゆっくりとした歩調で見て回りながら、山本が
しみじみとつぶやく。
最上段の花壇で、先ほどの園児たちとまた遭遇をする。
チューリップの花壇をぐるりと取り囲み、画板を置いて写生をはじめている。
さきほど一番元気だった男の子が2人を見上げる。

 「白髪あたまのおじちゃんと、
 綺麗なお姉さんがまだデ―トしているよ。先生」

 山本が、男の子の背中で立ち止まる。
「上手だね、ぼく。お絵かきが」と声をかけると男の子が、さ
らに元気な声で答える。
「僕のお嫁さんはねぇ~、ほら、真っ正面にすわっているよ!)と、
得意そうに、反対側に座っている女の子を指さす。
お嫁さんと呼ばれた女の子は、「ふんっ」と鼻を鳴らして、横を向いてしまう。


 「あら?・・・・どうして並んでお絵描きをしないのかしら。
 油断していると、他の人にお嫁さんをとられちゃうわよ。ねぇ~ぼく」


 響もついつられて、会話に参加していく。

 「ぼくは、さっちゃんを見ているのが大好きなんだ。
 並んだらさっちゃんの顔が見えないもの。さっちゃんは、
 みんなの人気者だよ。
 でもぼくと違って、とっても照れ屋さんなんだ」

 園児たちの写生の様子を見物している大人たちから、失笑がもれる。
男の子はそれでも何故、さっちゃんが大好きなのかを山本にむかって説明する。
先ほどの保母さんが、ニコニコと笑いながらやってくる。


 「ほらほら。おしゃべり大好き人間の、たっちゃん。
 おしゃべりをしすぎていると、また、さっちゃんに嫌われます。
 ごめんなさいね、この子、園で一番のおしゃべり君です。
 お母さんも、とても賑やかな人です。
 ご覧の通り、この子もお母さんいそっくりで、親子二代の賑やか雲雀です。
 あら、余計なことを言っちゃっいましたねぇ!。あたしったら。
 忘れてくださいな。あくまでも内緒の話です。
 陽気が良くなってくると、人は警戒心まで緩んでくるようです・・・・
 いけませんねぇ、気を付けなくは。ほっほっほ」


 たしかに心の底までが、ほんわかとしてきそうな陽気だ。
日だまりになっている公園では、暖かさにつられてやって来た大人たちもまた、
のんびりとした時間を楽しんでいる。