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連載小説「六連星(むつらぼし)」第61話~65話

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 ハラハラと舞う桜の花びらを、山本が眩しそうに見上げる。
季節ごとにたくさんの花で彩られる吾妻公園は、3方向を急峻な山に
囲まれている。
敷地は棚田の形に連なりながら、3つの山肌の隙間に横たわる。
山肌には、哲学の小路と呼ばれている遊歩道がある。


 遊歩道には、まるで日陰を作るかのように、桜の並木が続いていく。
南向きに作られている花壇には、多くのチューリップが咲き乱れる。
斜面を埋める樹木の間に、白と紅の梅の木がある。
3方向を取り囲まれている吾妻公園は、公園自体がひとつの巨大な日だまりだ。


 「色とりどりのチューリップと、散っていく桜の花びら。
 かすかに残った白い梅の花に、目にしみるような黄色の山吹。
 たしかにここは、別天地です。
 ここに足りないものといえば、緑の若葉だけです。
 花たちの方が、季節に敏感なのでしょうか。
 山の上の方はまだ、まったくの枯れ枝のままで寂しそうですもの。
 あちらには、はっきりとまだ冬の気配が残っていますねぇ」

 稜線に見える木々に、まだ春の芽吹きの気配は見えない。


そんな稜線の様子を見上げながら、山本と響きが歩きだそうとした時に、
背後から可愛い足音が近づいてきた。
振り返ると、小さなリュックを背負った黄色い帽子の一団が歩いてくる。
ジャージ姿の保母さんに引率されて、にぎやかに坂道を上ってくるのが見える。


 「あら・・・・地上を、雲雀(ひばり)さんが歩いてるわ!」

 響のつぶやきを、引率の先頭に立った保母さんが笑顔で受け止める。

 「うふふ、ほんと。子供たちは、ひばりのように賑やかです
 こんにちは。
 とっても良いお天気ですねぇ。
 青空でさえずる雲雀が、にぎやかな季節になりました。
 負けず劣らずこの子たちも、朝からとても元気です。
 たしかにこの子たちは、地上を歩く雲雀といえますねぇ。あっははは」

 
 「あ・・・はい、こんにちは。ごめんなさい。
 すこぶる可愛いカルガモさんたちの、お散歩だとおもいます。うふ」


 「お天気が良いので、チューリップのお絵描きにやってきました。
 すぐ麓にある保育園ですが、ここまで歩かせるだけでも四苦八苦します
 車に乗り慣れているために移動は全部、車で行くと子供たちは
 思いこんでいます。
 大変な仕事です。カルガモたちをなだめすかして歩かせるのは。
 子供たちは、一番上にある花壇まで登る予定です。
 さぁてみんなも、応援をしてくれている綺麗なお姉さんとおじさんに、
 しっかりと、ご挨拶をしてくださいね」