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海野ごはん
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今夜 君とラブソング

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「こんな夜は 昔の恋バナ」









最後の一杯のワインを飲みながら

夜のベランダで街の灯を見ている

今夜の夜風は涼しい

しんとした夜 遠くの車の音 星が見えない夜

こんな夜は昔話が似合いそうだ


考えてみると これからの未来の時間より

過去の時間が長い。。。もう人生の半分以上を生きてきている

早いね。。。

残りは20年か30年か・・・








1977年の話し。。。


大学生だった僕は 当時付き合っていた彼女がいたが

同じ学部で知り合った女の子に「好き」だと告白され

まんざら悪い気がしなく 放課後の喫茶店とかに

仲間連れで良く遊んでいた

当然 彼女が僕に気があることは知っているので

ついつい隣に座り サービスのつもりか楽しく笑わせていた

秋だったと思う。。。。

この甲斐バンドのアルバムが凄くいいから

私の部屋に聞きにおいでよ。。。となった

放課後の喫茶店でみんなとさよならして 僕は彼女の部屋に

内心ドキドキしながら 下宿の部屋に上がらせてもらった

小さなプレーヤーに大きなLPレコード

針を落とすと小さな雑音がスピーカーから流れ そのあと

ハスキーボイスの甲斐よしひろの歌が流れてきた

「最後の夜汽車」は旅回りのシンガーがどこかで恋をして

切ない別れを歌った歌だ

歌詞の一部に・・・

”僕が淋しいって言ったら 
 あの人はバカねってそっと笑った
 頬に手をやり 僕しかいないって言ってくれた
 君が乗った最後の夜汽車が
 僕の街を遠ざかる”

とあった。。。

なんだか大人の男と女のような気がして 好きになった

二人で聞いてると 夕方から夜になり

部屋の中は暗くなった

若い男女がひとつの部屋で 暗いところで音楽を聞く・・

こんなシチュエーションじゃ キスをしないほうがおかしい

でも僕には本命の彼女がいて

でもそれでも 今目の前にいる彼女が僕を好いていてくれて・・

自分で「悪い男だ」と思いながらキスをしてしまった

はじめて二股をかけた夜だった

甘美な恋愛のような 気持ちのいい情に包み込まれると

遠くにいる本命の彼女は霞んでしまう


女にそれほど手馴れてなかった僕はキスに夢中になり

甲斐バンドなんか 途中で忘れていた

結局 ちゃんと聞かないまま 遅くなったので帰った


次の日 学校で彼女に会うと気恥ずかしかった

ただの友達から 二股を意識した彼女になった

放課後の喫茶店 いつものように 

みんなとバカ騒ぎするのだが どうも意識してしまう

そして みんなとさよならすると 

当然のように彼女の部屋に行った

また甲斐バンドを聞く。。。。そして また罪のキスをする

結局 

僕は彼女の買った「この夜にさよなら」のアルバムにつられて 

まんまと彼女の誘惑に落ちた。。。

正直に本命の彼女に そのことを告白する勇気はなかった

罪の意識と 大人の世界のキスが交じり合い

なんとも居心地の悪い そして少し刺激的な秋を過ごした



それから

本命の彼女に内緒にしたまま 半年を過ごしてしまった

僕を誘った彼女は 最初から僕に彼女がいることは知ってた

だから 長く続ける程 彼女は勝った気でいたんだろ

そのうち僕は本命の彼女と別れることになった

原因は二股でなく 別の理由だった



本命の彼女がいなくなって 淋しくなった僕は

彼女の部屋に逃げ込んだ 忘れるために。。。。

そして 本棚から「この夜にさよなら」を取り出し

小さなスピーカーから流れる歌を聴いた

黙りこくったまま ずっと歌を聴いてると

部屋の持ち主の彼女は 淋しそうに僕に気使いしてくれてた


暗い部屋で並んで壁に座り 曲を聞く

「そばにいるけど あなたは彼女が好き・・・」

彼女の言葉が痛い。。。。

彼女の辛さもわかり 僕はまた偽りの愛で彼女を抱き寄せる

甲斐よしひろの歌がせつなく 二人涙した


あの時の情景は このアルバムを聴くと思いだす

ずっと過去の話し。。。。





いろいろ あったな。。。。

恋愛は刺激的で楽しくもあり 哀しくもあり

終わりのない恋愛はあるのだろうか・・・





”星の降る夜 ひとりぼっちで

誰かのぬくもり 拾い歩く

星の降る夜 ひとりぼっちで

いつかのやさしさ 捜し歩く・・・”








さっきまでyoutubeで「甲斐バンド」を見ていた

「この夜にさよなら」は1977年にリリースされたアルバムだ


https://www.youtube.com/watch?v=ceCH9O3LTiQ