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海野ごはん
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novelistID. 29750
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今夜 君とラブソング

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「冷たい雨。。。逢いたくなるよね」









冷たい雨が降る夜は 心切なく ため息が漏れる

指の隙間から 大事な時間が音もなく こぼれてゆくようだ

ねえ

このまま季節も変わり 年老いてゆくなんて寂しくない?



何かをしなくちゃいけないなんて

そんな使命感も欲望もなく

空から落ちた雨が 道を這い 川に流れてゆくように

ただ ただ時間が過ぎてゆく


寂しくなったら電話していいよ。。。

そんな昔の言葉を思い出して 迷いながら電話する

トゥルルル・・・

呼び出し音が2回 3回と数を増すたび

やめようかと躊躇する

もう忘れてるんじゃないか僕のこと。。。

何を喋るつもりなんだ やめとけよ。。。

電話を切ろうとする自分が現れる

トゥルルル・・・


やっぱり止めよう ただの寂しさで電話するなんて・・・

そう決心したときに 昔の彼女が電話に出た

一拍置いた間の後に ためらいがちの君の声

もしもし・・・

受話器の向こうに懐かしい声がした

その懐かしさに わけもなく胸がつまり声を詰まらせる

もしもし・・・

ためらいから心配に変わる君の声



2年の長い月日は 一瞬に消え去り

仲良く手を取り合ったあの頃がよみがえる

そんな勘違いにすがって 声を出す

ひさしぶり・・・



どしたのこんな夜中に・・・・

かけて悪かったかな・・・

いいよ・・・

小さなやさしさが僕をほっとさせる

寂しくて 切なくて。。。なんて言えない


馬鹿だね。。。思い出しちゃって・・・

どしたの?

・・・・・・なんだか時が過ぎるのが早くて 戸惑ってる

・・・・つらいことがあったの?

うん まあ 毎日が言葉にならない

言ってることがわかんない。。。飲んでるの?

いや。。。寂しいだけだ

つい本音が出てしまった




今更 また電話してごめん

いいのよ・・・

元気にしてるか?

なんとかね あなたは?。。。。元気じゃないみたいね

わかるか?

わかるわよ 寂しいって言ったじゃない・・・

ああ どうしようもなく寂しい

なんともならないわ

何故?

大人はみんな 寂しいのよ。。。誰だって・・・




そうか・・・・

君も寂しいのって聞きたかったが 聞けなかった



沈黙。。。。雨の音



なあ 僕のこと恨んでる?

・・・・・もう 忘れたわ

すまなかったな・・・

なにが?

。。。。。。別れたこと・・・

・・・・・そんなこと忘れたわ もういいのよ

すまない・・・

謝る為に電話してきたの?そうじゃないでしょ・・・

ああ 。。。。。ただの気まぐれ 寂しさからだ

。。。。そうね あなたはそんな人 わかってるわ

すまない

別に謝って貰っても あなたの寂しさは埋め切れないわ

。。。。。冷たいんだな

。。。。。今夜の雨のようにね

そっちも雨が降ってるのか?

ええ・・・

雨の夜は寂しいな なんだか心がズキンとくる

そうね・・・


言葉少なく 電話を握り締める手に力が入る

やさしさも思い出も 砂時計のように音もなく落ちてゆく

どれだけの時間が 僕のそばを通り過ぎてゆくのだろう

君の優しさに甘えながら 僕は電話を切らない

無音のつながり・・・・

切らない君の優しさ・・・

こんなに何も喋らないで 君のことがわかるのなら

ずっと前から わかってあげればよかった


冷たい雨の音がする夜更けに

僕たちは無音の電話で繋がっていた

壁時計の秒針が 時を刻んでいた

過ぎ行く時間 過ぎ去る過去 過ぎ去る君と僕

時が止まることはない。。。。

寂しさが 昔の彼女に電話した。。。






「ユウジ」・・・ すぎもとまさと

https://www.youtube.com/watch?v=JWyDYjYBeDo&spfreload=10