連載小説「六連星(むつらぼし)」 56話 ~60話
連載小説「六連星(むつらぼし)」第58話
「響と赤いランドセル」
「ねぇ、トシさん。
今までみたいに、『六連星』を手伝ってもいいかしら。
実はもう、金髪の英治に紹介をしてもらったお店は、辞めてきちゃったの。
考えている事が有って、それまでの限られた期間になると思うけど、
それまでの間、またお店で使ってくれるかしら?」
「別にかまわないぜ。
ただし、水商売でもらうほどのバイト代は出せないぜ。
それでもいいのなら、響の好きにするがいい」
「いらないわよ、バイト代なんか。
居候として迷惑ばかりかけているもの、多少のお役に立ちたいだけです」
「お、ずいぶん前向きな姿勢だな。
お前、被災地で、なにか変なものでも食わされてたのか?。
殊勝な心がけだ。まるで人が変っちまったみたいだ」
「それをいうなら殊勝な心がけでは無く、善意と言ってください」
トントンと、響が元気に階段を駆け上がっていく。
東北の被災地から戻ってきて、早くも一週間余りが経つ。
その間、いろいろ思案をしてきた響が、ひとつの結論をだしたような気配がある。
『あの子なりに被災地を真近くに見て、何か感じるものが有ったんだろう・・・』
清子への連絡を、俊彦もそんな言葉で締めくくった。
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」 56話 ~60話 作家名:落合順平