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連載小説「六連星(むつらぼし)」 56話 ~60話

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連載小説「六連星(むつらぼし)」第60話
「放射線管理手帳」

 例年以上に寒い日ばかりが続いた3月が、ようやく終わった。
月が変わり4月の声を聴くと、さすがに朝夕が暖かくなってくる。

(寒い冬がやってきた年は、吾妻公園で奇跡と呼ぶ光景が見られる。
遅れてやってきた春のために、開花が遅れた桜の花と、
あわててやってきた温たたかさのために、一斉に咲き始める色とりどりの
チューリップたちが、同時に園内を埋め尽くすの。
私はこの風景が大好き。
いつも寒い3月が来ると、それを楽しみにわくわくしていたわ。
数年に一度のことだけど、響にも一度、是非見せてあげたいわね・・・・)

 母の清子が、よくそんな風に語っていたことを響が思い出す。
そういえば今年は、異常なほど寒かった・・・・
母が言っていたそんな奇跡の光景を、吾妻公園で見ることができるのかしら、
と毎朝カレンダーを見るたびに、響が、密かにときめきをはじめる。
そう思いはじめたのには、ひとつの理由が有る。