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大場カナコ
大場カナコ
novelistID. 54324
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ココロの雨 (上)

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そのせいか、母も少し余裕が出来たようで以前ほどキツくは当たらなくなった。
とはいえ、全くなかったワケでもなく。
突然怒られて、家から追い出されたこともあった。
けれど、休みの日には必ずみんな外で遊んでいた。
だから、1人ぼっちになることはなかった。
唯一、みんながお昼ご飯を食べに帰る時だけ1人取り残されたようで寂しかったが、しばらくするとまたみんな出てきたから孤独になることはなかった。
そんなことが何度かあった。
ただ、いまだに何故怒られたか理由がわからない。
他の人から怒られたり、注意されると理由もよくわかるし、やっちゃいけないんだ!って反省した。おかげで良いことと悪いことや常識を教えてもらえた。
けれど、母に関しては
「トロイ!!要領が悪い!見ててイライラする!」
だけで、どうしたら怒られなくて済むか…相変わらずそればかり考えていた。
小学1年生の私には、ツラくてたまらなかった。

そして、最も忘れられない事件が起きた。
2年生になったある日、母が集金してきたお金が千円足りない。と言うのだ。
預かった時にはちゃんとあったらしい。
「みんなから預かっている大切なお金、知らない?」
そんなこと初耳だし、同時お金にはあまり興味がなかった。
あったとしても100円そこそこ。
ましてや、お金の置き場所すら知らなかった。
すると、突然子供部屋へ行き、私のおもちゃを引っ張り出してきた。
10㎝程のハートの鏡の下に小さな引き出しがついたものだった。ボタンを押すと鏡の奥のライトがチカチカ光ったような…
----だから何?
その瞬間、小さな引き出しを引っ張り出し奥を見た。
「ほら、ヤッパリ!!」
何が何だか訳が分からずキョトンとしている私に、引き出しの奥を見せた。
そこには押し込まれてクシャクシャになった千円札が入っていた。
----えっ…?なんで??お年玉かなぁ。けど入れた覚えないし。何?何で??
呆然としている私に
「正直に言いなさい!あんたでしょ?あんたがやったんでしょ!」
「えっ?知らない!こんなお金。入れた覚えもない。」
「じゃあ誰がやったの?たっくん??あの子がそんなことするハズないっ!」
「けど、本当に知らない。私じゃない!」
「ウソつくな!あんたでしょ?他に誰がいるの??」
「でも、知らないものは知らない。」
「しつこい!あんたしかいない!!」
「本当に知らない…」
本当に知らなかった。
こんなやりとりが10分、いや20分近く続いた。
----このやりとりが永遠に続くなら、私がやったことにしたら終われるのかなぁ。
と思ったり、
----そこまで言われたら…私がやったのかなぁ。けど知らないし。
と考え始めた。
そのうち、もうどうでもよくなってきた。
濡れ衣だろうが何でもいい、とにかく早く終わらせたかった。
どうせ私がやったて言わない限り終わらないし、そう言わせたいのだとわかった。
「私がやった。」
その瞬間、私は畳の上に倒れた。
----痛い…何事?
どうやら思いきりビンタをされたようだ。
畳には血が付いている。
鼻血が出ていた。
ショックだった。
鼻血が出るほど叩かれたこと以上に、信じてもらえないことがショックだった。
それからしばらく母は狂ったように私を罵った。
何度かまた叩かれた。
けれど、それ以降の記憶がない。
----私じゃないのに…。本当に知らないのに。
その言葉だけが、エンドレスでグルグルと頭の中を巡っていた。
「あぁ言わないと終わらないと思ったからウソついた。本当に知らないし、覚えもない。」
後日、母にそう言ってみたが、いくら言っても信じてもらえなかった。
この事がキッカケで、お互い信用しなくなった。
私は信じてもらってないと、ハッキリわかった。

それでもやはり学校生活だけは、いろいろあったがそれなりに順調だった。
それが救いだったのかもしれない。
毎回遠足はバスで行くのだが、なにせ人数が多い。
しかも全校一斉に…となると、小学校の前の4車線はある道がバスでいっぱいになる。
学年ごとに時間をずらして出発していたのだろうが、それでもズラリと並んだバスは見応えがあった。
おまけに、1台のバスには1.5クラスが乗る。
つまり、どこかのクラスが半分に分けられるのだが、これまたよく知らない隣のクラスと一緒になると心細さで楽しさ半減なのだ。
転校して初めての遠足は悲惨だった。
市内の植物園へ行く予定だったのだが、雨で延期。
予備日も次の予備日も土砂降りだった。
結局、体育館でお弁当とお菓子を食べた。
他にも思い出は沢山ある。
1年生の頃、担任の先生の取材がしたい!とのことで、テレビ局の人達がやって来た。授業中もカメラが気になり、みんなソワソワ。けれど、映ったのはほんの少し…。
他にも全校集会か何かで、象の物語を聞いた。
教室に帰って、さぁ!さっきの象の絵を書きましょう。
が、象の身体を大きく書き過ぎたせいか、鼻が画用紙に入らない…とりあえず、ごまかし書いたのだが…なんと、その絵が金賞を取ったのだ。
それから何回か絵が廊下に飾られたり、書道で賞をもらったり。
体育では運動会の踊りの練習をしていたら、上手いと言われ、舞台で見本に踊らされたり。
あとは、体育館に劇団の人達を呼んでオズの魔法使いを観たり。
これがまた本格的で、小学生ながら感動したのだ。
中でも一番忘れられない出来事があった。
それは、どこの小学校でもあるあるネタなのかもしれないが…出ると言うのだ。
『トイレの花子さん』とは少し違うが…
体育館の隣には小さなトイレがあった。
校舎や体育館に比べて、そのトイレだけ古く異様な雰囲気だった。
真っ昼間でも真っ暗なトイレだったので、怖くて入ったことがなかった。
しかも、児童数の割に便器が1つしかなかったので、ますます怪しい…
いつしか、あのトイレには女の幽霊がいる…なんて話をチラホラ聞くようになった。
そのうち、噂は誰もが知るようになった。
そしてついにクラスの男子達が暴れだした。
1学期の終業式も終わり、家に帰ろうとした時誰かに連れて行かれた。
何故連れて行かれたのか、私だったのか覚えていないが、気がつくと学校で一番行きたくない場所に立っていた。
そこにはクラスの男子数名がいた。
幽霊を追い出す…だったか、幽霊を見てやる!
だったか、理由はハッキリ覚えていないが、トイレに石を投げようと言うのだ。
幽霊だの、祟りだのが怖かった私は必死で止めたものの、聞いてくれるハズもなく…
どこから拾ってきたの?!
というぐらい大きな石を幾つも投げ始めた。
ガラスが割れ、ガシャン…バリバリ…もの凄い音がした。
数分後、誰かが担任の先生を呼んで来た。
その子は誰がやったのか、全員の名前を言い出した。
私の名前もあった。
----私止めたのに!石投げてないし。もぉ、最悪!何で私まで名前出されるのっ?よく知りもしないで。
と思ったものの、言っても信じてもらえないと思い、教室に連行された。
誰もいない教室。
ガランとしているが、蒸し暑い…
ランドセルを置き、先生のお説教が始まろうとした。
その時だった。
「カナコちゃんはやってません!むしろ止めていました!!」
おかげで私だけ無罪放免となった。
作品名:ココロの雨 (上) 作家名:大場カナコ