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WonderLand(上)

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 中に足を踏み入れると、奥から人の声が聞こえてきた。
 耳を澄ましてみると、それは言葉ではないようだった。低い、呻き声のようなもの。あたしは、そろりそろりと声のする方へと歩み寄った。
 カウンターの奥には、前に来たときには気付かなかったけれど、小さな扉があって、声はその奥からのようだった。あたしは、その扉のノブを、静かに回した。小さな隙間から中を覗き込んで、あたしははっと息を呑んだ。
 視界の先には、二人の人間の姿があった。衣服を乱して、密着し合ったその二つの身体は、激しく上下に揺れている。あたしが聞いた低い呻き声をあげているのは、下になっている方の人間で、それはリリーさんだった。リリーさんの上に乗り、激しく腰を振っているのは、小太りの、何処にでも居そうな中年の男性だった。
 うっ、うっと、中年男性が腰を突くごとに、荒い息と共に声にならない声を漏らす。
 直感で、見てはいけないものだと思った。あたしはすぐに外に出なくちゃと、一歩後ずさった。そのときだった。すぐ後ろのカウンターに身体がぶつかり、置いてあったグラスがテーブルにかたんと倒れた。
「誰だい!?」
 恐怖で頭が真っ白になった。逃げたい、でも逃げられない。足がすくんで、動けなかった。リリーさんは、男性の身体を引き離し、身体を起こして乱暴に扉を開けた。
「この間のガキじゃないか、こんなとこで何してんだい!」
 部屋の中に居た上に乗っていた男性が、慌てて衣服を身に着けている。すべてを身に着けると、あたしを押しのけるようにして扉の外へ出て行った。そのまま、出口の方へ行こうとする。
「アンタ、まだ代金もらってないよ!」
「イッてないのに、払えるか!」
「ほざくんじゃないよ、ケツにチンポ十五分以上突っ込んでたろうが!普通の男なら、簡単にイッてる時間だよ!」
 リリーさんの強い気迫に脅かされるようにして、男はよそよそとポケットからお札を数枚抜いて、カウンターに投げ捨てるようにして寄越した。
「足んないじゃないか」
「こんなふざけた状況に金払ってやってんだ、ありがたく思え!」
 声を上ずらせながらまくしたてるように云うと、男性は逃げるようにして店を出て行った。
 リリーさんはそれ以上その男性に構うことはなかった。その目はあたしに向けられた。
「このクソガキ!商売の邪魔をしやがって!クローズの札が出てたろうが!」
作品名:WonderLand(上) 作家名:紅月一花