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WonderLand(上)

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「あら、ごめんなさいね。そうね、あなたのパパはあたしにとってはお客さんだったの。でも、パパはちょっと違っていたかもしれないわねー」
「どういうこと?」
 あたしが聞くと、ずっと黙っていたリリーさんが、「そんな話、子どもに聞かせるもんじゃないよ」と、低い声で割って入った。
「いいのよ、アリスは真実を知りたいから此処へ来たんだもの。そうでしょ?」
 返答に困っていると、ウサギは自分が吸っていた火のついた煙草を、あたしに差し出した。その目は、くわえろと脅していた。あたしはなされるがままにその煙草を手に取り、口にくわえた。苦い味が口の中に広がり、その煙が咽喉に達した瞬間、あたしは激しく咽せた。
「アリスはワンダーランドへ迷い込む運命なのよ。ウサギに出会ってしまったら、歩き出さずにはいられないわよねぇ、アリス。たどり着いた先が、日向ではなく、日陰だった、それだけ」
 そう、笑みを浮かべる顔は、生気の感じられない人形そのものだった。




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「パパはね、あたしとセックスしたいって云ってついてきたの。身体を提供する代わりに、そんなパパを眠らせてお金を頂戴するのが、あたし。わかる?」
 その言葉は、驚くほどに躊躇いがなく、ストレートだった。あまりにもあっさりと云うものだから、それが悪いことなのかどうなのかも、よくわからなくなった。
「でも、巻き上げるって云ってもすごく小額なのよ。一回五千円程度かしら。もちろん、食事代やホテル代は別よ。パパとホテルに行ってセックスした後、お薬で眠ってもらうの。怖い薬じゃないわ、軽い睡眠薬よ。それから、お財布から抜いてもわからない程度の小銭をいただくの。
 べつに、お金が欲しいわけじゃないのよ。そんな小額、何の足しにもなりはしないもの。
 お金を抜くのは、その人が日陰から抜け出す最後の切り札なのよ。盗まれたことに気付いたら、ゲームオーバーってこと。そう、これはあたしのゲームなの」
 ウサギの顔は、カードゲームでもしているときのように、本当に楽しそうだった。
「あたしは、その人間の日向を侵食するゲームをしているのよ。
作品名:WonderLand(上) 作家名:紅月一花