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ACT ARME10 謎謎謎謎

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ツェリライは、一瞬何か言いたそうな表情をしたが思い直し、足跡を辿る。足跡はどん詰まりの空間をまっすぐ進んでいる。そしてあるところまで進んだ後、足跡はぱったりとなくなっていた。
そしてその無くなった先にあったものは・・・
「ゴマさんの足跡が途絶えた先にはあのクマのようなものの足跡があります。」
ゴマが最後に立っていた場所のすぐ先にあのクマの足跡がある。それが意味することとは・・・
「まさか・・・」
「必ずしもそうだと決まったわけではありません。しかし、最悪の事態は想定しておくべきでしょう。」
突然言い渡された酷な宣言。ジュンはショックを隠し切れない。
「だ、大丈夫だよ、きっと。そのゴマって人だって簡単にやられてしまうような人じゃないんだろう?きっとどこかに逃げている可能性もあるって。」
レックがあまり信憑性のない励ましをする。しかし、それでも少し気はまぎれた。
「まあ真実がどうであれ、これを起こして聞いてみるしかないね。とりあえず何か縛るものとかない?」
「あ、じゃああたしがやるわ。」
アコが杖を出す。
「木精(ククノチ) ヴァインパイチェ」
倒れたクマの両脇から蔓が現れ、その先端を体に巻きつけて持ち上げた。
代表して言い出しっぺのルインがクマに近づく。
「おい、ここになんか変な足形をした人とか来なかった?まさかと思うけど、食べちゃいましたとか言わないよね?どうなの?」
刀の柄尻で突っつきながら質問する。
「・・・タベル?」
しばらく突っついていたら、ようやくその一言だけ返ってきた。
「いやタベル?じゃなくてね。ここになんか人が・・・」
「タベル」
「いやだからね・・・」
「タベル。タベルタベルタベルタベルタベルタベルタベルタベル」
「!?」
元々異常だったクマがさらに異常な状態になったことを本能で察したルインが距離を取る。
ルインが離れたと同時に、アコが巻きつけていた蔓がすっぽりと抜け落ちるように消滅した。
ぽてりと落ちたその体。立ち上がるというには完全に重力を無視した、まるで頭から糸で引っ張られるかのように起き上がり、ゆらりとこっちを向いた。
その光景自体は先程までと全く同じ。しかしなぜだろう。九人のうち誰一人として、全くデジャヴを感じることはなかった。
レックが灯している炎からの光も一切届かぬほどの闇。しかし、その闇に覆われているはずのクマの姿ははっきりと見て取れた。
「モット・・・・チョウダイ」
闇が大きくなる。
「まさか・・・」
ツェリライが震えた声を漏らすが、誰も反応しない。クマの姿が闇に消える。
「まさか・・・そんな・・・この力は・・・!」
闇が一瞬収縮し、一気に膨張。その中から闇の中に姿を消したクマが現れた。
だが、その見かけは完全にクマのそれではない。いや、確かにクマの耳はあるにはあるが、そこ以外の部分はクマどころかこの世のどこをさがそうと同じような姿の生物は二つと見て取れない異形だった。
下半身からヘドロのように抜け出したいびつな形の胴体。その胴体から生える二対の針のような腕?足?と、肩辺りから伸びるハサミのような腕。そんな上半身を前かがみに倒し、まるでサソリのような体制でこちらを向いているのだ。
一言でその姿を言い表すならば、気持ち悪い。二言で言い表すならば、すごく気持ち悪い。
「ななななななななななななな!?」
「おいなんだアリャ!?」
一同慌てている中で、驚きながらも冷静でいるツェリライとフォートがあれについて考察する。
「やはりあの気配は・・・。」
「フォートさんも察していましたか。となるといよいよ間違いなさそうですね。」
「お前のデータにはあの生物について何か知ることはないのか?」
「いえ、僕が集めたデータベースにも僕自身の知見にも、あんな化け物はありません。ただ確実に言えることは・・・」
「想像以上に厄介な手合い。」
『あの化け物は闇の力を扱えるということ。』

そこから先は、圧倒的だった。
ルイン一行、残存戦力ほぼ0。その力の前に、全くなすすべがなかった。
まず最前線で立ち向かっていったカウル・グロウ・ルインが撃沈。
スピード・パワーと防御力・なんでかよくわからないけど負け知らずという力を持った、八人の中でもオールラウンドに戦闘できる三人が倒された。
続いてフォートとレックが立ちはだかったが、二人は白兵戦や乱闘には強いが、こういった規格外の相手には圧倒的不利になる。やはりその力が敵うことはなかった。
残るはハルカ・アコ・ツェリライ、そして戦闘能力のないジュンのみ。
抗ったところで、結果は明白である。
そのことを理解しているのか否か、アコは爆破攻撃(エクスプロージオ)を乱発する。しかし、一向に効く気配がない。
「なんっで、効かないのよ!」
今残っているメンバーで有効打を与えられそうなのはアコだけだ。アコ自身もそれがわかっている。だからこそここで何としてもコイツを止めなければならない。
だが怪物は動きを止めるどころか、ひるむことすらなくずんずんこちらに迫ってくる。
見かねたツェリライが指示を出す。
「みなさん!ここはひとまず撤退です!」
しかしアコは従わない。
「何言ってんのよ!ルイン達放っておいて逃げる気!?」
「全滅すれば、それこそ目も当てられない!いったん下がって体制を整えるべきです!」
「そんなことしなくても、こいつをあたしが倒せばいい話でしょ!」
「それができないから退くと言っているんでしょうが!」
「なめないでよ!こんなやつ、すぐに倒すんだから!」
完全にムキになっている。だから背後の怪物が鋏を振り上げていることに気付かない。
「アコさん!危ない!」
アコと怪物の間に、桜鼓を構えたハルカが割って入る。攻撃は受け止めた。しかしその衝撃まで受けきることは叶わず、ハルカは吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「ハルカっ!」
ハルカは倒れたまま動かない。こうなってしまっては是非もない。ツェリライはアコの腕をつかむ。
だが、そこから引っ張ってもアコは動かなかった。
「・・・いい加減にしなさいよ。」
その声に、ツェリライは思わずつかんだ腕を放す。
喜怒哀楽の表現が激しいアコでも、ここまで怒りを露わにすることはそうない。
自分の大切なものたちが不条理に傷つけられる怒り、そしてそれを目の当たりにして何もできない自分に対する怒りと悲しみ。
ふざけるな。もういやだ。もう二度とあんな目にあってたまるか。
アコの激しく昂ぶる感情は、アコの奥底に眠る潜在能力を引き出す。

ツェリライとジュンが目を見張る。
「! これは・・・!」
「アコさんの体が、光っている?」
そう、光源だったレックがおらず、アコの技によって発生していた光もない今。真っ暗闇の空間にぼんやりと、しかしはっきりとアコの姿が光り輝いていた。
「あんたなんかに、仲間を奪われてたまるかーーーー!!!」
アコの体を覆っていた光は一つに集約され、轟音と共に怪物をまっすぐに貫いた。
時間にすればほんの数秒。しかし、その光景を見ていたものにとっては一生モノのインパクトを残した。

作品名:ACT ARME10 謎謎謎謎 作家名:平内 丈