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ACT ARME10 謎謎謎謎

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静まり返った洞窟内。光線の眩しさに目を覆っていたツェリライとジュンが目をやると、そこには胴体に風穴があいた怪物と、その手前に力なくペタン娘座りしているアコ、そしておそらく先ほどの余波で穴が開いた天井から外の光が差し込んでいた。
「アコさん。大丈夫ですか?」
ツェリライ歩み寄り、手を差し伸べる。
「え?ああ、あたしなら全然平気。それよりもみんなを助けないと。」
アコは立ち上がり杖を構えるが、ツェリライが止める。
「アコさんも無理しないでください。先ほどの一撃で、孔を消費しているでしょう?」
「さっきの一撃って、あの眩しくなったあれ?なんだったの?」
まさかの自覚なしである。それだけ必死だったのだから仕方ないか。
「光の孔術。アコさんは、光属性にも目覚めたんですよ。」
「それって・・・」
「はい。アコさんは本格的に全属性使い(オールビューター)として目覚めつつあります。闇の力に目覚めるのも、時間の問題ですね。」
「それってあたし、やばいんじゃない?なんか変な奴らとか政府につかまったりとか・・・!」
オールビューターと聞いて、アコは依然ハルカに聞いた話を思い出し戦慄する。
だが、ツェリライは意外にも落ち着いていた。
「確かに、そのリスクについては否定できませんが、そこまで問題視する必要はないんじゃないですか?」
「え?」
「何があっても守ると、そう約束してくれた人がいるんでしょう?」
「あ・・・」
アコは倒れているルインを見る。
「そっか。そうだったね。なら大丈夫か。」
普通ならただの気休め。だが、なぜか説得力がある。だが・・・
「その発言者は呑気におねんねしてるけどね。だらしないわねぇ。」
そして改めて杖を構えた。
そして再びツェリライが止める。
「いや、ですから。あなたも初めて光の孔術を使って消耗しているのですから休んでいてください。手当てなら僕がやります。」
しかしアコは首を横に振る。
「いいわよ別に。この人数一人一人やってたら大変でしょ。まだゴマも見つかってないんだから、ちゃっちゃと終わらせましょ。それに、あたしなら大丈夫だから。」
確かに、言われてみれば強がって体の不調を隠しているようには見えない。ごく自然体で話している。
感情が高ぶっていたとはいえ、光の力を使って平然と立っていられるとは。アコの潜在能力には驚かされるばかりである。
「水霊(ヴァルナ) ヴェファイシュテンリーギン」
傷を癒し、力を取り戻させる雨が降る。

「いや、助かったよ。ありがとうね。」
「どういたしまして。でも次からはしっかりしてよね。」
アコの叱責に、ルインは申し訳なさそうに頭をかく。
「いや〜。針で刺されるだけかと思ったら、まさかそのまま体力吸収(ライフドレイン)されるとは思わなかったよ。一本取られたね。」
はたから見ている分には気付かなかったが、どうやらルイン達は根こそぎ体力を奪われていたらしい。たしかに、それならグロウまでもが倒れていたのも納得できる。
と、呑気に話ができていたのもこれまでだった。一行のすぐそばで人ひとり分ほどの大きさのがれきが落ちてくる。
続けてまた一つ、また一つ。その間隔はどんどん短くなっていく。
やがて、これまでに何度も聞いてきた地鳴りが聞こえてきた。
これは・・・
「ま た 崩 落 か !!これで何度目だよ!?」
文句を言っても仕方がない。完全天然の洞窟ではないとはいえ、地下から地上まで穴を貫通させてしまえば、洞窟全体が脆くなっても仕方がないというものである。
ともあれ、ここから逃げ出さなければならない。幸い、脱出口はすでに確保されている。
その時だった。
「まずい!ハルカ!ジュン!避けろ!」
カウルが叫ぶ。その先には互いに体を預けあいながら歩いていた二人の上に、ひときわ大きな岩塊が落下していた。
今のコンディションでは、誰一人として間に合わない。ハルカは負傷している。二人の上に岩塊が・・・
「っうおおおおおぉぉぉぉぉ!!」
ジュンが吠える。もっていた鉄パイプを思いっきり振りかぶり、岩塊にぶつけた。その様子は、砕くことができるという自信があったというよりは、ただがむしゃらに振り回しただけのように見えた。
しかし、ジュンの攻撃と岩塊が衝突した時、岩塊は派手な音とともに砕け散った。
直後崩れ落ちるジュンを、あわててハルカが受け止める。
「ジュンでかした!だが無茶しすぎだ!」
カウルが駆け寄りハルカに代わってジュンをおぶさる。
「きついかもしれないが、しっかりつかまってくれよ!」
そういうと、カウルは一足飛びで地上まで通じている穴へと飛び出していった。

「・・・とりあえず全員無事?ちゃんといる?」
洞窟から命からがら抜け出し、ようやく一息つけたところで全員が無事であることを確かめる。幸い、誰一人かけることはなかった。
しかし・・・
「ゴマ・・・。」
ジュンが傷の手当てを受けながら深くうなだれる。
そう、ルイン達は当初の目的を果たすことは出来ていない。それどころか、最悪の事態を想定しなければならない状況なのだ。
「ジュン・・・。」
レックが何か言葉をかけようとした時だった。
「全員構えろ。」
突如警鐘を鳴らすフォート。全員すぐさま武器を構える。
「下から来るぞ。気をつけろ。」
下からということはつまり、まだあの洞窟には何かがいたということ。追ってくる理由はわからないが、来る以上迎え撃つしかない。
全員に緊張が走る。
やがて地中から何かが地面を掘ってこちらに向かってくる音が聞こえてきた。それもすごいスピードだ。
「ぶっはーーーーー!!」
少年のような高い声で大声で叫びながら、地面から何かが飛び出してきた。
その何かが地面に着地しようとした瞬間を狙ってルインが飛び出した。
「剛・破d」
「ゴマ!!」
斬りかかろうとした瞬間、自分の技にかぶせるように探していた者の名を呼ぶ声が響いた。
結果、完全に体制を崩したルインは非常にダサい感じに前のめりに倒れこむことになった。

それからしばらくは、再会した二人の微笑ましい会話、などは展開されず、ジュンが悪戯をした子供を叱りつけるように怒っていた。
それに対しゴマはでもでもを繰り返し続け、最終的には俯いてごめんと呟いて終わった。傍から見れば親子喧嘩である。
しかし、八人が気になったことは、そんなことではなくゴマの見た目である。
事前に話を聞いていたルイン・レック・アコ・ツェリライも、初めて見るその姿に興味津々であり、全く話を聞かされておらず、当然普通の人だと思い込んでいたグロウ・カウル・ハルカ・フォートからしてみればまさに吃驚仰天である。
それは身長50センチくらいの生き物だった。見た目は青から水色といった感じで、両手には三本の長い爪、後ろに長く垂れ下がった耳のようなもの、大きく反りあがった尻尾という、洞窟の中で遭遇した生物と同じく、これまで全く目にしたことのない姿だった。

「あの〜、もしもし?そろそろいいかな?」
親子喧嘩が白熱しているところをルインが割って入る。
「とりあえず自己紹介と、どうしていなくなったのか理由を教えて?」

「オイラはゴマ。ジュンと一緒に旅してるんだよ。」
「うん、それはジュンからも聞いた。で、君はいったい何者?」
作品名:ACT ARME10 謎謎謎謎 作家名:平内 丈