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ACT ARME10 謎謎謎謎

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一同がその場所を見ると、真っ黒に焼け焦げたカタツムリの体と、バチバチと痛そうな音を立てながらピクリとも動かないナマモノが転がっていた。
「・・・どういうこと?」
残念ながら今の状況だけではこれまでの経緯は伝わらなかったようだ。グロウは、面倒くさいが手短に話すことにした。


「なるほど、電気ハリネズミねぇ・・・この洞窟は不可思議生物の魔窟かなんかなの?」
先ほどまではその不可思議生物の相手をするのにてんやわんやしていたため考える暇はなかったが、改めて考えると不思議すぎる話である。
この生物たちは一体何なのだろう。ツェリライもこのような生物は知らないとのこと。ツェリライは自身の知識と知能に誇りを持っているだけあってそのレベルは高い。そのツェリライが知らないということは本当に正体不明生物である。
まあその疑問は後で考えることにしよう。とりあえずは・・・
「アコちゃんどうしようか?」
忘れかけていたが、アコはまだ壁にへばりついたままだ。
あのカタツムリは全身を例の粘液で覆っていたため、ルイン達の攻撃が効かなかった。
しかし、電撃を食らってやられたということは、あの粘液は電気には弱いということだ。
8人の中で電気が扱えるのはこの場にいないカウルと動けないアコのみ。
「一応聞いとくけど、アコちゃんそれにピンポイントで雷とか落として自力で脱出できない?」
「できるわけないでしょ。」
まあ当然か。
となると、カウルと合流するのを待つしかない。が、そのカウルがどこにいるかがわからない。中に入る前に連絡はしたから、ここにきてはいると思うのだが・・・。
とりあえずQBUによる探索とツェリライ特製通信機が再び通じるようになるまで、安静にすることにした。


「む、9時の方向に生体反応発見です。僕の通信機の電波も同時に受信したため、カウルさんたちで間違いないでしょう。」
しばらくの時間が経過した後、ツェリライからの吉報が届いた。
が、同時に厄介事の知らせも届いた。
「背後から巨大な熱量を感知。これまでの流れから察するに、カウルさんたちも何『物』かに襲われているとみていいでしょう。」
一難去ってまた一難。新手のお出ましである。
「とりあえずカウルさん達をこちらに誘導します。ルインとレックさんは迎撃準備を。」
「わかった。」
「あいあいさ〜。」
二人は襲撃に備えるため構える。敵が出てきたその無防備な一瞬で技をたたきこみ倒す。それが一番の理想である。
やがて、複数の人がこちらに向かって走ってくる音と、明らかに人よりもはるかに重い何かが地震のように洞窟内を揺らしながらもう突進してくる音が聞こえてきた。
「距離100m・・・    50  20 10 5,4,3,2,1 今です!」
ツェリライのカウントと同時にカウルたちが音の先の暗がりから飛び出してきた。同時にその後ろからでっかい馬が躍り出た。
「剛・破断閃!!」
「紅蓮鉤爪(レッドニードル)!!」
開幕一番の強襲。二人が放った技は、しっかりと馬の体に命中した。
「こいつもおまけだ!電球!!」
合掌するように両手を激しくぶつけあわせ、一気に孔を込め作り上げた電撃の弾をぶつける。フォートも振り向きざま発砲した。
一斉攻撃を食らった馬は、激しく嘶きながらそびえ立つように前足を上げ、そして倒れた。
「やったか!?」
その台詞はフラグというものである。
案の定一切時を待つことなく、馬は元気よく立ちあがり突進してきた。
「ああそうですか一見シンプルだけど地味に猛練習した僕の新技は出落ち要因の咬ませ技ですかどちくしょう!」
何やら大声で嘆き悲しんでいるが知ったことではない。カウルはこの状況を打開するための切り札を探す。
「アコはどこだ!?アイツの氷技ならあれをどうにかできるだろ!」
カウルの叫びに答えたレックが指をさす。その方向には未だ壁にへばりついたままのアコの姿があった。
「・・・なんであんなことになってんだ?」
「さっきまで闘っていたヤツが粘着力の高い弾を撃ちだしてくるヤツでね。」
「助け出す方法は?」
「多分電気に弱かったから、カウルならどうにか・・・うぉあ!?」
会話していたら不意打ちを食らった。聞きたい情報は聞けたので善は急げとばかりに行動に移す。
カウルは右手に電撃を纏わせると、一直線にアコに向かって突っ込んでいった。
「っえ゛!?いやちょまっ っうぇ!?」
いきなりこちらに向かって仲間が攻撃を仕掛けようとしてきたらそりゃだれだって慌てるだろうが、も少しかわいらしい声で慌ててほしいものである。

思わず目を瞑ったアコが恐る恐る目を開くと、ようやくあの粘液から解放された自分の体をしっかり抱きとめているカウルの姿があった。
「あ、ありが・・・」
本当は「とう」まで言いたかったのだが
「アコ!アイツに何でもいいから氷技ぶつけてくれ!」
「・・・・・」
一瞬だけ、一瞬だけ囚われていた自分を助けてくれたという乙女チックかつロマンチックな感慨に浸っていたがはじけて消えた。
「・・・展開(アスバム)」
不機嫌でも(不必要な)呪文を言うのは忘れない。
結局、アコが放った氷の矢の雨を降り注がれただけで、炎の馬はあっさり倒された。
「いや、助かった。ありがとうな。」
やっと一息つけてほっとしながらアコにお礼を言ったら
「はいはいどういたしまして。」
心なしか冷たい反応が返ってきた。何か悪い事でもしただろうか?

何がともあれ、これで全員が集結して敵も倒された。
ジュンはすぐにでも探索再開したいと願い出たが、今動き回ったせいで傷が開いてしまったことと、襲ってきたとはいえ、元々ここに住んでいたものを斃してしまったことに責任を感じたハルカが、きちんと弔ってあげたいという意思を尊重し、また少し休息を取ることにした。

30分ほど後、ジュンの体も軽く動き回れるくらいには回復した。
「おーい、ハルカちゃん。そろそろ行くよー。」
ルインが先ほど自分たちが斃した謎生物たちに両手を合わせているハルカに声をかける。驚いたことにこの休憩時間の間、ハルカはずっと両手を合わせ祈り続けていたのだ。
罪なきものを斃してしまった後悔はわかるが、ここまでとなるとやはり凄いものである。ルインはハルカと初めて出会った時の堂に入った構えとは裏腹に、怯えるような表情を浮かべていたことを思い出す。
その優しさが長所となるのか短所となるのかは、ルインにはわからないが、でもその精神は少しうらやましくもあった。
戦っているときにの自分には自分でも驚くほど慈悲が無い。決着がつけば気が落ち着くが、それまでは相手が誰であろうと問答無用で戦闘を愉しんでいるように思える。
フォートと戦った時がいい例だ。戦いは好んでしないと言いつつも、結局は自分もバーサーカーなのかもしれない。
まあ十人十色千差万別、蓼食う虫も好き好き。常軌を逸しなければ戦いを好むのも悪くないだろうと考えることにする。

一行は慎重に足取りを進める。いつどこから何の襲撃を受けるか分かったものではない。石橋は叩きすぎて損はないだろう。
が、結局それは徒労に終わり、一行は特に何も出会うことなく吹き抜けのホールのような行き止まりに突き当たった。
「何か来る。」
「何か来ます。」
作品名:ACT ARME10 謎謎謎謎 作家名:平内 丈