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ACT ARME10 謎謎謎謎

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結局その口から出た言葉はその一言だけであり、少年は脱兎のごとく外へと飛び出していった。
少しの時間だけ騒がしくなり、また静かになった室内に取り残された四人。
「変わった人ね・・・。」
アコの率直な感想のみがその時発せられた唯一の音だった。
しばらく四人ともそのまま固まっていたが、やがてルインが一番乗りで立ち上がり、軽く身支度を始めた。
「まさかルイン・・・追いかけるつもり?」
レックが尋ねるとルインはさも当然のようにYESと答える。
レックは個人のプライバシーに関わるのはどーたらこーたらと反対したが、ルインはその意見を封殺した。
「だってあのキョドリ方とかさ、明らかに何か不自然過ぎたじゃん?なんか隠してるみたいで。何かよからぬことを企んでいる一員とかかもよ?」
目を覚ましたらいきなり見知らぬベッドに寝かされていたら誰でも慌てそうなものだが、放浪者がポピュラーなイーセではこういったケースはそこまで珍しくない。
大抵は自分の持ち物が盗まれていないか確認した後、お礼を言って辞去するものである。
レックはなおも食い下がる。
「でもそうじゃなかったらどうするのさ?」
「レックも感じたでしょ?あの人から醸し出されてたなんか違う感じする感。あの正体は突き止めた方がいい気がするんだよね。って自分の勘がささやいてるんだよ。」
これ以上こちらが何言ってもレックは揺らぎそうにない。
諦めと呆れを交えたため息を吐きだし、最後に質問する。
「本音は?」
「暇つぶし。もっと言うなら胸の中のもやもや発散運動がしたいから。」
それを聞いてレックはもう一度、今度はさっきよりも深いため息をついた。
「ほらほら、ぼさっとしてないでさっさと行くよ。結局さっきの人水飲まなかったからまた倒れるかもよ?」
ルインに言われて思い出した。そう言えばすぐに飛び出していったせいで水を飲ませるのを忘れていた。
床に頬り投げられている水の入った容器を手に持ち、レックたちも先ほどの少年の後を追った。

まだそこまで遠くに入っていないだろうというルインの予測通り、ツェリライのQBUで探索したらすぐに見つかった。
陰からこっそり様子をうかがうと、どうやら少年は誰かを探しているようだ。手を口に当て、必死に誰かの名前を呼び掛けている。
周囲の好奇の目にさらされても気にも留めていない。
「ふーむ、どうやら家出の挙動不審は探し相手のことが気にかかって仕方がなかったからなのかな?レック・・・ ってあら?」
ルインが後ろに振り向くと、そこにいたはずのレックがいない。
どこ行ったのかと再び前を向き直った時、レックはすでに少年と話をしていた。
いつの間にあそこまで移動したのかと呆れ驚きつつも、もう隠れる必要はなくなったため表に出て話が終わるのを待つことに。
しばらくして話が終わった二人がこちらにやってきて事情を話すことになった。
名はジュン。放浪者をやっていて、ゴマという相棒と共に旅をしていたが、昨日から行方不明となり、さらには荷物までもが無くなり、飲まず食わず寝ずでずっと探し続けていたとのことだ。
一通り事情を聞いたルインは早速切り込む。
「なるほど、それは大変だったね。もしよかったら僕らも手伝おうか?そのゴマって人探し。」
唐突な話にジュンはあわてて手を振った。
「い、いえ。お気持ちは嬉しいですけど大丈夫です。そんなご迷惑を・・・」
ルインはそんな遠慮する際に言う定型文をぶった切る。
「別に迷惑じゃないよ。僕こういうのやってるし。」
そういうとルインは、いつの間に拵えたのかわからない名刺をジュンに差し出す。
「ね?君みたいに困っている人を助けるのが僕の仕事だからさ。遠慮なんてしないでOKだよ。」
「で、でも料金が・・・」
「ああ、いいよ今回はタダでも。」
「え!?いやそんなこと・・・」
「気にしなくていいよ。僕は人助けが好きなんだから。ほら、よく聞くじゃん。『お金で買えない価値がある』ってやつさ。」
じりじりとルインに追い詰められていくジュン。それにしても何が「僕は人助けが好きなんだから」だ。白々しいにもほどがある。
レックはルインがジュンを追いかける前に言っていたことを暴露して助け船を出そうかと少し考えたがすぐにやめた。
一つは、そんなことをすればルインから何言われる&されるかわかったものではないから。
もう一つは・・・
「何が『僕は人助けが好きなんだから』よ。ジュンを追っかける前は面白そうだからとか言ってたくせに。」
自分が言わずとも代わりに口出すアコがいたから。
対するルインの反応はかなりわざとらしいくしゃみでかき消すという、なんとも爺むさいものだった。
「それで、お金とかは気にしなくていいから。よかったら手伝うよ。実際問題、君ひとりじゃ何かあった時に大変なんじゃない?」
そう言ってルインはジュンが身につけている鉄パイプを指差した。
「え!?ああ、いや、その・・・。俺所持金がほとんどないもので・・・」
「いや、放浪者である以上まともな武器の携帯は必須だよ?それこそ食料よりも優先順位が上になるくらいに。」
さっきまでルイン押されっぱなしだったので、余計な追い討ちはしないでおこうと思っていたレックだったが、元放浪者ということもあり、思わず口を挟んでしまった。
「・・・・・」
案の定ジュンは言葉に詰まり黙り込んでしまった。レックは自分の軽率な言葉で会話を途切れさせてしまったと顔をしかめる。
「・・・おそらく、戦闘行為その他荒事は、そのゴマという方が一任していた。違いますか?」
ツェリライがジュンの答えやすいようにYES or NOの二択で答えられる質問を出してくれた。
「そ、そうなんです。」
こういう時は素直にツェリライの頭の回転に感心する。今の質問はジュンが回答しやすいだけではなく、ルインが話を続けやすくなったからだ。
「でも今はその相棒はいないわけで。だからもしよかったら手伝うよ?ね?」
ルインもツェリライのように二択で答えられる質問を投げかける。だがその質問の仕方は、明らかに「YES」か「はい」の二択しか用意されていなかった。

因みに、ジュンが選んだのは「はい」だった。

改めてパートナーのゴマが行方不明になった際の状況を聞いてみる。
ジュンとゴマは一昨日、いつものように野宿をし眠りについた。そこまではこれまでと何一つ変わらない日常だった。
しかしジュンが目を覚ました時、隣で眠りに就いていたはずのゴマがいなかったのだ。
とくに荒らされた形跡などなく、ジュン自身も全く目を覚まさなかったため誰かと争ったわけではなさそうである。
すぐにジュンはあちこち探し回ったが見つからない。そうこうしているうちに日付が変わり、このキブまで流れついたという。
キブに限らず、このラトリアという国において町に入るためには関署で検問を受けなければならないが、それを忘れて危うく不法侵入しかけてしまうほどジュンは動揺していたという。

・・・さて
とどのつまりはゴマ失踪後の行先は全く持って皆目見当つかないということが分かってしまった。
とりあえず一行はゴマが行方不明になった現場を訪れた。
作品名:ACT ARME10 謎謎謎謎 作家名:平内 丈