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ACT ARME10 謎謎謎謎

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この質問には首を傾げた後、
「オイラはオイラだよ。」
と返ってきただけだった。別段隠している風にも見えない。
それでは次の質問。
「ジュンの話を聞いてると、夜に突然いなくなったみたいなんだけど、なんか理由あるの?」
「それはね・・・」
どうやらゴマは、夜寝ているときにふと目を覚ますと、自分たちの荷物が今まさに何者かに盗まれているところを発見し、すぐさまジュンを起こそうとしたが起きず、荷物を盗んだ影がそのまま逃げだしたので追いかけて言った結果、あの洞窟に迷い込んでいたのだという。
そして洞窟が崩れそうになるのを察知し、全力で穴を掘り地上まで上がってきたそうだ。
おそらく荷物を盗んだ影というのは洞窟にすんでいた謎の生物だろう。
とりあえず放浪者の割にはあまりにも軽装だったジュンに対する疑問は解けた。だが
「しかし、なんでまた盗んだ奴はお前たちの荷物を盗んだんだ?」
荷物を盗まれたという地点から洞窟の入り口までは近いというわけではない。他にも放浪者が多くいる中、なぜジュンたちの荷物だけが盗まれたのかは謎である。
「でも、大丈夫でしたか?中にいた生き物たちに襲われたりはしなかったんですか?」
ハルカがゴマの身を心配するが、ゴマは顔を左右に振り振りしながら否定する。
「ううん、オイラ洞窟に住んでるやつらと何度かあったけど何もしてこなかったよ?」
その返答にジュンが何かを思い出したようだ。ゴマにひっそり耳打ちする。
「それでゴマ、何か洞窟の中に帰るための方法についての手掛かりとかはなかったか?」
「ううん。何もなかった。」
「そうか・・・」
ジュンは少し肩を落とす。
「お前たちは故郷へ帰るための方法を探すために旅をしているのか?」
二人のひそひそ話がばっちり聞こえていたフォートが、珍しく自分から口を開いた。
「え!?あ、えーっとその・・・」
ひそひそ話が聞かれたことに驚いたのか、はたまた質問に答えられないのか、ジュンがしどろもどろになる。
だが、それ以上は聞く必要はなかった。
「うん。オイラたち、地球に変えるための方法を探しているんだ。」
なぜなら、ジュンがこれ以上何か言う前にペラリと話してしまうゴマがいたからである。
「ゴマ!」
ジュンが慌てて口を抑えにかかるが時すでに遅し。すでにそのワードは全員の耳に入っていた。
「チキュウ?」
皆初めて聞く言葉である。少なくともイーセにはそんな国も町も存在しないはずである。
この中で知っているただ一人。いや、二人(?)か。
「ジュン君?説明プリーズ。」
やはりか、知らないワードが飛び出してきて、それをみすみす聞き逃すような人たちではないことを、ジュンこの短い時間で学んでいた。
こうなってはもうごまかしようもない。ジュンは観念したようにすべての事情を話した。
自分たち二人はこのイーセとは違う地球という星からやってきたということ。原因は全く不明だが、ある時突然家から飛び出したゴマを追いかけたと思ったらいつの間にかこのイーセにやってきていたこと。
自分たちの旅の目的は地球に帰る方法を見つけること。因みにゴマは地球でも存在しない謎の生物であるということ。洗いざらい全て話した。
「へぇ〜。地球ねぇ。」
「イーセ以外の別世界が存在するだなんて、初めて知りました。」
「僕も初耳ですね。」
「なんだか今日のツェルは知らないことばかりね。」
「僕とて全知全能というわけではありませんから。」
初めて聞く世界の話に向こうでワイワイ盛り上がっている中、レックは一人ジュンの身を心配する。
「ジュンはこれからまた旅をするのかい?」
「はい。そのつもりです。」
「それだったら装備はもっとしっかりしたものにしないと。特に武器が鉄パイプじゃいくらなんでも心もとないよ。ゴマというパートナーがいるにしても、最低限の自衛手段は確保しておかないと旅の道中では何が起こるか分からないんだから。とにかくまずはその怪我をどうにかしないと、今立っているだけでやっとの状態なんだから。あと怪我の応急処置の仕方についても知っておいた方がいいね。あとは・・・」
かつて放浪者であり、その危険性を知っている身としてはジュンが心配なのはわかる。が、心配事が多過ぎである。
お母さんかお前は。見かねたルインが割って入る。
「まぁまぁまぁ。レックの言うことももっともだし、まあとりあえず今日はうちに泊まらない?無駄にでかいから部屋はいくらでもあるよ。」
その提案をジュンは一度は断ろうとしたが、口まで出かかったその言葉を飲み込み、ありがたくその提案に甘えることにした。
どちらかと言えば、提案に甘えたというよりは、「ルインの誘いを断っても無駄」ということをこの短時間で学んだだけかもしれないが。
「お、それだったら孔の扱い方を指南してやれるな。さっきの岩砕きを見た限り、まだまだ孔の扱いが未熟だった。もっと無駄のないやり方を伝授してやるよ。」
向こうのダべリングの輪に入っていたかと思いきや、実はこっちの話も聞いていたカウルが話に加わる。
しかし、ジュンは驚いた。
「え?俺は孔なんて使えないから扱い方なんて教わっても・・・。」
慌てて両手を振りながら断るジュンに、今度はこちらが驚いた。
「は?いやいやそんなことはないだろう。さっき岩が崩れ落ちた時、お前は確かに孔を使って岩を砕き、ハルカを守っただろう?」
「え・・・」
ジュンの思考が停止する。あの時は無我夢中で良く覚えていなかったが、確かに腕力だけで岩を砕くことなんてできない。そもそも、応急処置をしてもらっているとはいえ、満身創痍の状態でこうして立っていられるというのも、本来地球人ならありえない話だ。
そう、『地球人』ならあり得ないのだ。

呆然と立ち尽くすジュン。この地球と変わらないようで地球と違うところだらけの世界に飛ばされ、艱難辛苦四苦八苦の繰り返しにもまれていたから考える余地もなかった。
この世界はいったい何なのだ?そしてこの世界に飛ばされた自分は何者なのだ?
地球には両親がいる。家がある。だけど、自分は、自分には。

「はーいそこっ。周りを置いてけぼりにして自分の世界に浸らない!」
背中を思い切りはたかれ、思考の渦から叩きだされてしまった。乗り物酔いをしたような感覚にとらわれながらも後ろを振り返ると、背中をたたいた張本人がいた。
「何を考えてたのかは知らないけど、君の目的は何も変わらないんだったら、今深く考えることないじゃん。暇になった時にでも考えればいいよそんなの。」
暇な時でも自分の抜け落ちている過去なぞ微塵も思いを巡らせないやつが言うと、説得力があるのかないのかわからなくなる。
だが、それでもジュンの心は少し晴れた。そうだ、自分たちの目的は何も変わってはいない。
「お前たちに心配されなくったって、ジュンにはオイラがいるから大丈夫だもん!」
今までジュンの足元にぴったりついていたジュンが威勢よく飛び跳ねる。
「おお、頼もしい頼もしい。ま、先ずはその怪我治してからだね。というわけでみんな、僕とレックはジュンを病院に連れて行くから、後は各自解散ね〜。」
今回もドタバタした割にはゆるい終わり方である。

作品名:ACT ARME10 謎謎謎謎 作家名:平内 丈