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最後の孤島 第3話 『煙にまかれて』

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「なんで使えないんだ! 条件はいいはずだぞ?」
衛星電話は、ずっと圏外だと告げている……。空を仰げる場所でも同じだ。電話に損傷は見当たらない。もし欠陥品だったら、メーカーを訴えてやる!

「おじさん! この島じゃあ、そんなの使えないよ!」

 突然、少年の声がした。脊髄反射的に、声がしたほうを向く。長年の大麻売買のせいで、クセになってしまった動きだ。
「アメリカ大統領が使っていそうなやつでも、外部への通信はできないと思うよ」
声の主の少年は、赤茶色の長めの髪を生やしていた。彼のそばには、ガールフレンドらしき少女がいる。少年は白人で、少女はアジア系だ。変わった組み合わせだが、旅行者だろうか。

「救助隊とかは呼んでくれたのかい?」
もし呼んでいるのなら、あの積荷を急いで隠さなくてはいけない。
「見たところ、火事は起きそうにないから、誰も呼んでない。だけど、もし具合が悪いなら、ウチで休む?」
少年はそう言った。泊まっているホテルのことを、「ウチ」と呼ぶやつは初めてだ。もしかすると、こいつらは金持ちの子供たちで、この島に長期滞在しているのかもしれない。
「ありがとう! そうさせてもらうよ!」
顧客相手によく使っている笑顔を、彼らに披露してやった。