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最後の孤島 第3話 『煙にまかれて』

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【倉野 比奈】(3)



 私は、島の人々に協力してもらい、ジャングルの中を捜索している。探しているのは、あの大麻売人だけでなく、ダニエルもだ。彼は、大麻売人を追いかけていったのだが、それからどうなったのかは、まったくわからない。
 死んではいないと思うが、心配しているのは確かだ。夕暮れに近づくにつれて、心配のバローメーターがどんどん上昇していく。彼を今すぐ見つけられるなら、大麻売人が、このまま行方不明になっても構わないとすら、思い始める。

   パーン!!!

 ジャングルの奥から、銃声が鳴り響いてきた……。大麻売人が発砲したんだ! あの稼業なら、護身用に銃を持っていても、全然不思議ではない。
 私はとっさに「もしかして、ダニエルが撃たれた!?」と思った。彼なら、危険を冒してでも、行動を起こしてしまっているだろう……。
「ダニエル! 今行くからね!」
自分も危険だが、彼の身を考えると、ここで立ち尽くしているわけにはいかなかった!
 銃声がした方向へ、駆け出す私。近くにいた人々も、同じように走っている。彼らも私同様、ダニエルが心配なのだろう。
 走りながら、2発目の銃声を聞く。心配のバローメーターは、すでに100%を越えている……。



 拍子抜けするぐらい、銃声がした場所には、すぐに到着することができた。私は、自分の身も危ないということなど忘れて、その開けた場所へ飛び出した。強烈な匂いが出迎えてくれたが、それが気になる状況ではない。

 ――大木の根元が明るい。そこには、火だるまになっている大麻売人と、倒れているダニエルがいた!
「ガァーーー!!! ギャアーーー!!!」
ダニエルのそばで、のたうち回る売人。全身は完全に炎に包まれており、私も島の人々も、彼のことは諦めの表情で見ているしかなかった。悪い人間とはいえ、悲しく思えてくる。

 ダニエルに火が燃え移らないかと恐々したが、燃えるのは売人だけですんだ。黒焦げの焼死体となった売人。
 焼死の原因となった固形燃料は、自分は無関係だと言わんばかりに、火を消していた。

「ダニエル!!!」
私は、彼の元へ駆け寄る。他の人々もそうだ。
「起きて!!! 目を覚まして!!!」
彼の体を揺する。脈の振動はあるが、意識が無い。ケガの場所を探すため、全身を見回したが、無傷だった。なぜ、気絶しているのだろうか? 彼が持病を抱えているとは思えない。