最後の孤島 第3話 『煙にまかれて』
【ポールテン】(5)
警官が現れやがった! そいつは、俺様を睨んでやがる。
ここで捕まるわけにはいかない! 俺にはまだ、売るべき物が残っている! それをジャマさせるわけにはいかない! ジャマ者は排除だ!
そいつは、オレが威嚇射撃をしたにも関わらず、平然と立ってやがる。きっと、俺の銃の腕をバカにしてやがるのだろう!
いいとも、体でわからせてやる。オランダ一の大麻売人である俺様をジャマした罰だ! 警官だろうが、兵隊だろうが、この俺をジャマするのは許さない!
俺のピストルが火を噴く。鉄の弾が、そいつ目がけて飛んでいく。しかし、あと少しのところで、弾は外れてしまった。そいつは、俺同様に、悪運が強いらしい。もう1発避けられれば、誉めてやろう!
――おおっ! 飛びかかられてしまった! このジャングルの王者といった風格のトラだ。獣のくせに、人間様を殺そうとはいい度胸だ! あっちに行け!
しまった! トラを突き飛ばした拍子に、手から銃が離れる。銃は宙を舞い、火の向こう側へ落ちた。拾おうとしたが、火が炎の壁と化す!
なにくそ! 俺は勇敢な冒険者様なのだぞ! 炎の壁ぐらいで怯えていては、ただの笑い者だ!
そうだ! このトラに、俺の強さを示してやろう! この炎の壁など、たいしたことないと証明してやるのだ!
作品名:最後の孤島 第3話 『煙にまかれて』 作家名:やまさん