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最後の孤島 第3話 『煙にまかれて』

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【ポールテン】(3)



 飛行機に一旦戻り、機内の積荷から、持てるだけの商品をリュックに詰める。そして、飛行機と先ほどの船との行き来のあいだに聞こえてきた喧騒を頼りに、バザールへ向かった。

 先ほど休憩していた座礁した船にも驚いたが、島のあちこちにある船や飛行機に、何度も驚かされた。古今東西の物が揃っており、まさに博物館のようだ。
 せっかくなので、スマートフォンで撮影する。ただ残念なことに、アップロードはできなかった……。
 どうもこの島は、文明社会から隔絶されているようだ。まあ、じきにこの島にも、リゾート開発の波が押し寄せてくるだろう。今のうちに、土地を買っておくのも悪くない。


 バザールは賑わっていた。貧乏国っぽい店構えだが、賑わいはヨーロッパのそれと変わらない。往来する人々を見て、安堵する。
 だが、のんびりショッピングをしにきたわけではない。俺は仕事をしにきたのだ。さて、どの辺りで売ろうか? 商売をするには、売り場所が肝心だ。
 一通り見回ったが、警官の姿が見えない。ハンモックで昼寝でもしているのだろうか。まあ、もし近づいてきたら、逃げればいい話だ。逃げ足には自信がある。
 ベストポジションに立った俺は、行き交う買い物客に目を通す。

「また、アンに断られちゃったよ!」
「さんをつけろバカ」
お得意様世代である2人の白人少年が、買い物客の中から現れた。彼らが1番客になるだろう。

「君たち、こういうのに興味無い?」
俺は、少年たちの前に立ち、先ほどのマリファナタバコ『エース』を見せる。いくら島暮らしとはいえ、パックを見れば、これがなんであるかぐらい、すぐにわかるだろう。
「……ああ、こういうのに興味は無いですよ」
「オレたち、アルコールもタバコもやらないぐらいなんで」
冷やかにそう返事した。
「え? え?」
自分の目と耳を疑う俺。目の前にいるのは、遊びたい年頃の少年2人。少なくとも、聖職者ではないだろう。
 予想していなかった冷たい反応のせいで、次のセリフが思い浮かばない……。立ち尽くす俺。
「アンへの興味なら、めちゃくちゃあるんだけどな!」
「だから! さんをつけろと言っているだろ!」

 ……気がつけば、1番客になるはずだった2人の少年は、どこかへ消え去っていた。最悪の出だしだ……。
 なに、こんなことはたまたまだ。早く、次の客候補を見つけなくては。