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最後の孤島 第3話 『煙にまかれて』

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 ……その後、何人にアタックしたが、すべて断られてしまった。これほどの失敗の連続は、今まで経験したことがない。
「今日は厄日なんだ。そうに違いない」
もはや、自分にそう言い聞かせるしかなかった。とにかく、今日はもう閉店だ。
 ダニエルとヒナに見栄を張ってしまったが、適当なことを言って、ごまかしてしまおう。

「あっ、いた!」
その2人が近づいてきた。なんともタイミングが悪い。やはり、今日は厄日のようだ……。
「何個売ったのよ!」
「バラ売りしても、1本も売れていないだろう?」
皮肉屋のイギリス少年はともかく、日本少女はなぜか怒っている。どうやら、俺の商売が気に入らないらしい。警官に絡まれるより、めんどくさい雰囲気だ……。
「おかげさまで、1個も売れていないよ!」
残念なことに、ごまかし文句を考えるヒマが無かった。

「どちらにしろ、もうそんな商売はやめなさい!」
どちらにしろ、厄日の今日は、もう閉店するつもりだった。しかし、「そんな商売」というワードにピクリとくる。長年やってきた大麻売人としてのプライドが許さない。
「おいおい、お嬢さん。殻に閉じこもりがちな日本人には、わからないことだろうが、大麻は国際的に認められつつある物なんだぜ?」
そう言ってやらずにはいられなかった。
「だからって、この島では認められないし、そもそも必要とされていない!」
やれやれ、これだから日本は排他的なんだ。
「君は裁判官か? 母親か?」
「1個も売れていないことが、何を意味をしているかどうかもわからないの?」
「……うるさいな! 今日はたまたまだ! 厄日なんだよ!」
思わず口走る。
 今まで、俺の商品の需要が無かった地など無かった。きっと、この島でも売れるはずだ。売ってみせるとも! それまでは、この島に留まってやる。
「それを買ってくれるヤツを探してやるよ。尻を拭く紙として、誰か買い取ってくれるかもしれないし」
イギリス少年はそう言いやがると、両手を差し出してきやがった!

「失せろ! 俺は絶対、これを売ってみせるからな!」
今日は厄日なんだ。こんな奴らの相手をしていたら、明日も厄日になってしまう。
「あっ! 待ちなさい!!!」
日本少女が怒鳴ってきたが、俺は全速力で走り去ってやった。さっきも言ったが、逃げ足には自信があるのだ。