即興小説掌編集
星空テレパシー
じぶんの気持ちはいつも体の中にある瓶の奥の奥にあるから、なかなか出てこない。
だから伝えることも、体を動かすことも難しい。
夜、雨戸を閉めるのが楽しみなのは、
向かいに住むきみの部屋の窓から電気が漏れるのをみたいから。
頭の中で強く強く思ったことが、そのまま君に届けばいい。
弱い想いは流されてしまってもいいから、強く願ったことだけ。
ねえ、星が綺麗です
月は埋もれてしまいそうです
ぼくはとてもきみが好きです。
ぼくのことは見なくていい。
ねえ、星がきれいです。
こんなにも近くにいるのに、きみはいつもあの星と同じくらいの遠さだ。
同じ国に生まれ、同じ言語を話すのに、ずっとずっと遠くに感じるよ。
ねえ。
窓が開いて、きみの部屋の白いカーテンが外にでてくる。
ぼくは雨戸を閉じて細い隙間からきみの白い頬が闇を照らすのを眺める。
きょうは少しだけ、想いが届いたのかもしれないな。