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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章   14話   『生徒会主催 花見大会 前編』

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ただでさえ垂れ目な目が閉じそうなくらいじと~っとした目で冬姫は呆れた視線を俺に送る。…どうしてこうもこの娘は勘が鋭いんだ。これを他の方に回せばいいものを…特に信じ込みやすいその純な心にな。難儀な娘だ。

「まぁ、それはいいとしてだ。まどかちゃんもこれから公園に行くところなんだろ?それじゃ、一緒に行こうぜ」

「はいです。それで、あの、今日はお花見に誘っていただいてありがとうございますです。あの…その、今日はよろしくお願いします」

再びぺこりとお手本にしてもいいくらいの綺麗なお辞儀を俺たちに向けてするまどかちゃん。…ホントいい娘だ。

「あぁ!任せておけってッ!バッチリ今日は楽しもうぜ」

俺はぐっと力強いサムズアップと爽やかな笑みをまどかちゃんに向けていた。

「…ねぇ、まどかちゃんに会ってからなんかお兄ちゃんのテンション上がってない?あれだけさっきまで花見なんかやってらんないぜ~な顔してたのに」

「そだネ~☆きっと、ここでまどかフラグでも立てておきたいんでしょ☆今日は花見っていうイベントがあるからそれまでに好感度を少しでも上げて花見の終わり際のキャラルートでも狙ってるかもだネ~☆ゲームではよくあることだし」

「え?かえちゃんそれホント?」

「春斗のことだからきっとそうに違いないよ☆あたしは今、それが真実であると確信した」

「どういうこと?」

「見てごらんよ、あの二人を。もどかしいくらいに初々しい男女、さらに、会話する度に一言たりとも聞き逃さないとばかりに相槌を打ち、恥らうかのように視点が定まらなくもじもじする二人!!これはまさに恋人に成り立てホヤホヤの初々しいカップルを連想させる愛の昇華ッ!!きっと花見の後はこんなアツアツ☆ラブラブなシーンが待っていることであろうッ!!」

あたしはその情景を頭の中に思い描いてみた。





「花見終わっちゃったな」

「はい、そうですね。楽しい時間はあっという間に過ぎ去ってしまうって言いますが本当ですね。何だか寂しいですね」

まどかはふっと寂しそうな顔で茜色に染まった空の遠くを見据えていた。

「そうだな」

そう言うとまどかと同じように春斗も同じように空を見据える。
そして、ゆっくりと視線を落としながら春斗は笑みを浮かべ、口を開く。

「でも、まだ終わってないぜ」

「え?」

ゆっくりと春斗はまどかちゃんに向き直る。

「花見は確かに終わっちまった。でも、終わりがあればまた始まりもある。何事にも出発点から始まり、そして終着点で終わりを告げる。これは、当たり前のことだ。でも、それならまた始めればいい。それが例え、終わりが来てしまうことがあったなら終わらせないようにすればいい。そのためなら俺はどんなことが起ころうとも省みず身を投じるさ」

「せ、先輩それは一体どういうことですか?」

まどかは淡々と語ることがよく理解できなのか小首を傾げて春斗に問いかける。

「それはな、俺がまどかちゃんが好きだっていうことさ」

「…え?」

突然の春斗の告白に思わず呆然としてしまうまどか。

「俺はまどかちゃんが好きだ。誰でもない他でもないここにいる秋里まどかが好きだ。だから、ここから俺と始めて欲しい。俺とまどかちゃんの新しい始まりを」

「…せ、先輩」

まどかは恥ずかしそうだが嬉しさを隠しきれない笑顔を向け、その潤んだ瞳からすーっと涙が流れる。

「まどかちゃん?」

「…好きです。私も先輩のことが好きです。ずっと先輩に憧れてました。出会った時からずっと…」

眩いくらいに輝く屈託のない笑顔を春斗に向ける。

「…まどかちゃん」

「…先輩」

茜色の空の下、二人は抱き合い、そして、二人は見つめ合いゆっくりと顔を近づけて…。




「こんな感じかな~☆」

「いやだぁ~!!お兄ちゃんがまどかちゃんとそんな展開になるなんて~!!っていうかお兄ちゃんを誰かに盗られるなんて絶対いや!!お兄ちゃんの隣はボクだけのもんなんだもん!!」

明日香は道路だというにも関わらず玩具を買ってもらえないで駄々をこねる子供のようにバタバタと手足をバタつかせていた。

「でもでも、それはかえちゃんの想像だからそうとなるとは限らないよ~。…たぶん」

「ぐふふふ☆それはわかりやせんで旦那☆あんな今にもくっ付きそうなくらい接近してるんでっせ。それに、春斗は先輩、まどかちゃんは後輩の関係ときてる☆」

「それがどう関係するの?」

「ぐふふふ☆わかっておりやせんな~。いいかい、後輩が先輩に憧れるのは必然であり当然な事実ッ!!その逆も当然あるわけだ。恰好いい先輩、頼りになる優しい先輩。そして、可愛い後輩、ほっておけない後輩、これだけで上下関係から恋愛感情にも発展する十分な理論なんだよ☆例え、それが、どんなに歳が離れた子供からご年輩までこの心理は働くんだ。いるでしょ?小さい子が好きなロリコン、ショタコンの人、それに、もっと言えば親父好きな女の人、熟女好きな男の人とか!!これは即ちッ!!人間に持って生まれた性質、そう、本能だッ!!」

「…え、え?本能??」

あたしの言葉に冬姫もどうやら理解できてきたのか動揺し始めたようだ。

「ふっふっふ☆つまり、それはだネ、人間はすべからずエロ…あだぁッ!!」

「ってさっきから何独りで暴走してんだよ。そこまでにしておけ、それ以上続けるといろんな法律に引っ掛かりそうな勢いだからな」

俺は独り暴走するかえでの頭を黙る程度に叩いてやった。
しかし、一体こいつらはさっきまでどんな会話してやがったんだ?明日香はバタバタ道路でバタつかせてるは、冬姫は不安な顔しておどおどしてるし。

まぁ、どうせかえでのことだ。何かまたしょうもないことでも吹き込んだに違いない。
まったく、心休まる暇もないな。俺が心休まるときはいつやって来るのやら。休みの日くらいじっとしていてくれ。…ってまぁ今日は花見だから仕方ないけどな。

取り敢えずまどかちゃんの顔でも見て安らぎを得るとしよう。

「ほれ、行くぞ。もう約束の時間を軽く過ぎちまってるからな。急ごうぜ」

そう言い残すと、俺とまどかちゃんは先だって公園に向かって歩き出す。

「待ってよ~ハルちゃん、まどかちゃん」

「くぅ~!!お兄ちゃんを渡してなるものか!!待てぇい」

冬姫とそれと意味不明なことをほざきながら明日香も後からやってくる。
そして、俺たちは朝からドタバタさせつつ花見の会場である虹ヶ坂公園に向かうのだった。

「って待てよ。あたしを置いていくんじゃない!!馬鹿春斗~!待てや~」




それから足早に急いだ俺たちは5分もかからずに虹ヶ坂公園に到着した。
見渡す限り桜の木がこの公園一面に広がっていた。まるで舞い散る桜の花びらがピンク色をした雪のようだった。

「わー♪桜の花がこんなにいっぱいだよ~♪すごいすごい~♪」

そう感動していた明日香は我慢出来ずに舞い散る桜の花びらの吹雪の中へ飛び込んでいってしまった。…まぁ、これじゃしょうがないわな。

「うわぁ~綺麗~。ねぇ、ハルちゃん綺麗だね」

夢見る乙女のように瞳をキラキラと輝かせて俺の腕を引っ張ってはしゃぐ冬姫。