言の寺 其の弐
本編と本編の間で生きている
かわそこにながらうスチール缶のペプシは
ぬるまぬるまのぬるめの流れにその
へしゃげた形状を自ら愉しむようにそうそれはまるで(ある種の諧謔を込めて)
「ワタシは形状記憶喪失合金なのでございます」
と
言っているふうな
いつから沈んでいるのか
知っているもの応えてくれるのも色の禿げ具合褪せ具合のみで
太陽の嘲笑いをやり過ごし
瀬を早み
鋼鉄の独特の冷たさの中に閉じこもった闇 を
「……所詮本体はこのウツロなのです」
と
悲しんでいるような
ドジョウのテナント物件
鋼鉄をへしゃがせたのは
きっと自転車二人乗り
鋼鉄をへしゃがせたのは
きっと自転車二人乗り
「見てな」と言って力自慢した
若い男の所業だろふ
若い男の所業だろう
欄干から投げ捨てた
欄干から時速20kmで投げ捨てた
所業だろうよ
ペプシは今思っているのです
かわそこに赤白蒼の混交
そはかのえうろぴあの掲ぐ「自由平等博愛」
その塊たるワタシいやさ
いやその魂たるワタシ
魚の住処に落ち着いたとしてもきっと
ワタシ自身をこさえた工場の手は
同じ価値観を共有していた に違いない
失われた形状
その記憶
追憶
岩にせかされて……
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ここまでCMの映像