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言の寺 其の弐

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もし僕が小指になったら



たとえば僕が奇病に冒され
全身の感覚を失うとする
寝たきり 身動きのとれない 身体

小指の一本にのみ残された慈悲
そこにだけ感覚があって
君を感じる

目も開かず
耳も聞こえず

小指だけが微かに動かせ
そして世界と繋がっている

もしもそんなことになったなら
どうかお願いだ

「僕と指切りしておくれ」

温度のない闇のなか
僕の小指にそっと触れ
君の暖かな指をぎゅっと絡めて
ぶんぶん力強く振って欲しい

「…………きっとだよ」

その契りはまず間違いなく
叶いはしない ものだろう

だから約束通り

君は僕を忘れて
君の人生を生きてください

小指だけになってしまった僕はきっと
そんなことを願うのです

君のことが
好きだから

君のことを
愛しているから






作品名:言の寺 其の弐 作家名:或虎