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言の寺 其の弐

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透明をみている


目の前は常に透明だ。目の前というのは眼球に触れている大気のことです。大気の向こうには、景色とか、車とか、場合によっては君の服装とかがあるのですが、それはそれとして、僕は今、引越しの準備をおざなりに、現実逃避のバカンスの最中。
大気を見ているんだ。

透明をね。透明の正体を見極めようとしている。透明を構成している、元素記号を見ようとしている。HとかO2とかNとかがあるらしい。が、姿はみえない。当然だ。有史以来裸眼で原子 のシルエットを見た者はいまい。いや、何人かの偉大な詩人と、 麻薬中毒患者は別か。
透明を吸って吸って吐く。

本音も吐く。実はちょっとウンザリしている。失望といってもよい。修辞する事に倦いでいる。詩にはだいぶ前から絶望しているw 文章を使った公開マスターベーションに、何の意味がある?
本当に伝えたい感情があって書いている?それとも……

青空文庫で文章読本的なのを読み漁った。坂口安吾のがよかった。ホワイトデーのお菓子を渡したら、「バレンタインあげてませんけど……」と言われた。「そうだっけ?でもこれ、ラ・ブランシェのケーキだよ?」と言ったら、特にお礼もなく受け取りやがった。ちょっとだけその子のことが好きになった。

大気は透明。僕らもひょっとしたら透明。見えないけど、元素記号を吸って、自分に必要なものだけを吸収して、吐き出している。僕らの身体には、その機能がある。

今はそれだけで充分だ。作品を書くのには厭きた。詩は書き続けるだろう。マスターベーションを自制できるチンパン君は少ないのだ。ただ変わっていくと思う。

元素記号のようなものを書いていこうと思う。


作品名:言の寺 其の弐 作家名:或虎