言の寺 其の弐
ぬーどる きみのためにぬーどる
僕はナポリタンになる
美味しい美味しい
スパゲッティだ
「あたし、ナポリタン大好き」
って
君 言ったよね?
僕の決心は だからなんだよ
君に愛されたい し
食べられたいからこそ僕は
君の好む存在になる 君に自己を提供する
いうなればこれ
一種のアンパン男的美学
取りあえず浴槽に浸かる 適度に塩入れ
自分を湯がいてみる
僕の目指す高みはアルデンテ
一本筋の通ったイケ麺だ
「こんなもんか?」
と 二の腕摘まむ ゴリリと筋を感じ
「こんなもんだろう?アルデンテ?」
自分がアルデンテに仕上がっているのか イマイチ自信はないが きっとこんなもん
と 風呂上り 我に返る
「そもそも僕はナポリタンの作り方を知らない」
余分な水分を湯切りしながら僕は
クックパッドを開くのです
君に愛される方法が
きっとそこには載っているから
明日のデート
僕は全身ケチャップ塗れ
額にベーコンピーマン張り付かせて僕は
真摯に君の瞳を見つめる
君のオーダーを期待して
「君に平らげられたい! 」と
世界中のどの麺類よりも本気で切望しているのです僕は……
と
君からLINEが来た
曰く
「明日はおうどんたべたい気分」
なんということだorz……でも大丈夫
だって何しろ僕は
「本場香川の出身だからね」
作り直し
もう一度風呂入ろ
ピンと腰を伸ばして
お風呂に入ろう
君がジュルリとヨダレを啜り
僕の体を見つむ絵 湯煙に写して