エコ1,2,3
エコ3
<もう着いちゃった>
エコからのメールは、時々悪戯が入り、スクロールした先に
<なあんてね(^^) 今○○駅だよ>
と入っていたりする。
でも今回は、ちゃんと-end-になっていた。
そこで乗り換えて目的地に向かう待ち合わせの駅は近いので、すぐに家を出た。
<何号車に乗るか知らせて>
とあったので、返信で知らせた。
そんな風にして、今回はお茶目な悪戯もなくあれこれ喋りしていた。これから行く所はオレが去年一人で行った場所なので、その時に貰ったパンフを出して見せた。
「あ、一緒に行ったよね」
「えーっ オレ一人で行ったんだよ」
「え、そうだった?」
「おいおい 誰か他の男と行ったんじゃないの?」
「あっ しまった」
こんな風に冗談を言いながら話していると、一人で乗っている時と違っていつの間にか目的の駅に着く。
バス便もあるのだが、遊歩道沿いにある桜や、その先にある沢の植物などの写真を撮りながら歩いた。
エコとは身長が違うので、「ほら小さいけど滝が見えるよ」と言ってもそこは手前に藪があって「え、どこ? 見えないよ」となったりする。
時々、車道にも出るのだが、その時にエコは何も見るものが無い道の向こう側に渡ることがある。
「何か、見つけた?」
「ううん 違うの、左側を歩いていると落ち着かないんだ」
その昔、人は右車は左と教えられたことが頭から抜けないようだ。
「他の算数や国語もそうゆう風に頭に残っていればねえ」
とからかったが、全然くやしがらないで、
「うん 英語なんていつも追試だったからねえ」
と、得意そうに言うのだった。
そんな風におばちゃん達みたいに喋り続けているものだから、
「あれ、こんな道歩いた記憶が無いなあ」
「うん 私も無い」
「歳のせいかなあ、昔のことは覚えているのに最近のことは覚えてないという」
「そうでしょうね」
「即、納得するな」
地図が載っているパンフを見ることもせず、沢の流れを見ながら歩いてしまった。前方に何か見えてきたのがバス停だった。
「ありゃあ、通り過ぎちゃったよお」
「戻りましょ」
オレは遅すぎた地図確認をする。
「えーっ 停留所二つ分だ」
「まったく、しょうが無いねえ」
エコはあまり怒ったりしないので助かる。
「これを損したととるか得したととるかだな」
「運動になってよかったわね」
明らかに皮肉の調子でエコは言うが、オレは気にしない。
「せめて、この辺に珍しい植物があったりして」
「無い、無い」
オレは未練がましく道の脇を見ながら歩く。
「あ、あそこ、あの信号の所を左じゃないの」
バスがこちらに向かってきている。
「うん、そうかな」
オレは自信がなくまた地図を見る。大雑把な地図で、その信号の手前にも道があった。そこかも知れないなとも思った。
その道は方角的に合あっていたが、人しか通れない細い道だった。オレはその道に入って行く。
「え、そこ?」
エコが不審がりながらついてくる。でも、先は畑だった。元の道に戻って歩き始める。
「ほら、わたしがさっき言ったでしょ。ほんとにひとの話をきかないんだから」
「ははは、つい横道に入るくせがあってね」
「そうだよねえ 川越に行った時も遠回りしたよねえ」
エコの怒っているのか呆れているのか分からない口調を聞きながら、まったくその通りだと思った。
「男って女の話を聞いていないのじゃなくてね、同時にその重要度と自分がやろうとしていることの順番を決めているんだ」
「そして、間違う。と」
明らかに呆れた様子でエコが言う。