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エコ1,2,3

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園内には、農家からレトロな商店街、2.26事件で有名な高橋是清邸などもあり、内部の調度もあって資料館も兼ねている。中に入れる家が多いので、見て回った。エコは扉や引き出しがあると開けてみないと気が済まないらしく、こまめに開けている。
「そんなにあちこち開けて何に興味があるの?」
「別に無いんだけどね、開けてみたいの」
エコはそう言って照れたように笑った。

そんな風だから、時間がどんどん過ぎていって、だんだんおなかが空いてきた。ある洋館の一部が今現在営業しているカフェもあったが、エコの頭の中は甘酒があるだろう。オレは温かい肉まんが食べたかった。幸い風が無いのでそう寒さは感じない。

売店というか屋台とも思える店で甘酒、肉まん、豚汁、さらにタコ焼きも買って休憩所でお昼にした。
「幸せだねえ」
「うん、豚汁、あったまるねえ」
「ビールも飲みたくなったなぁ」
オレはリュックを開けて缶ビールを取り出す。
「えーっ まさか持ってくるとは思わなかったわ」
「リュックにいつも入ってるのはレジャーシートと折りたたみ傘だけだからね、スカスカなんだよ」
「それで、リュックがビール持ってけっていったのね」
「まあ、そんなとこだ」
「ずいぶん気の利くリュック持ってるんだねぇ」
そう言って「くくく」とエコが笑った。

時間がゆったりと流れているような、戦前と思える下町の商店街を見ながらビールを飲み、温かい肉まんを食べる。たしかに幸せである。理由は違えどお互いに配偶者との辛い日々もあったせいで、余計にそう感じるのかも知れない。

作品名:エコ1,2,3 作家名:伊達梁川