エコ1,2,3
ここは金持ちか大名の庭園だったのかもしれない。小さな池もあり、松の木の下が芝生になっていた。
そして少し小高い丘の場所にモミジの林があった。まさに、燃えているように紅葉が天に向かって伸びている。
「ほら、凄いでしょ、燃えているって感じだよねえ」
エコは自分の庭のように自慢げに言う。
「ふーっ」
オレは荷物を下ろして手を見た。赤い筋がくっきりとついている。
「ああ、少し替わってあげればよかったね」
エコは、今度は本気の顔をして言った。オレはそれだけで嬉しかった。
「おなかすいたあ、食べてからゆっくり見よう、写真も撮ろう」
「はいはい じゃあお弁当たべようね」
二人で落ち着く場所を探す。 東屋もあって、そこはすでに先客がいた。
「いっぱいだね」
「うん、でも天気もいいし屋根の下より芝生の上がいいよ」
ちょっと前に子犬のようだと思ってエコだが、いつの間にか母親のようになってお弁当を広げた。
ビールはちゃんと二人分あって、ニコニコ顔が恋人のように思えてくる。子犬から姉、そして母親になってから恋人。頭の中に人類の進化図のようなものが現れてオレは笑ってしまった。
「何、そんなに嬉しい?」
「うん、盆と正月が一緒に来たようだ」
「わあ、たとえが古いぃー」
「じゃあ、なんていうの」
「ま、とにかく乾杯しよ、はいお疲れさん」
「お疲れさん」
こんな風に過ごすのも紅葉狩りと言うのだろうか、そう思いながら、自分が子ども時代に感じた60代の姿と違うことにも可笑しさを感じる。
了