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エコ1,2,3

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約束の時間にエコの住むアパートに着いた。呼び鈴を押して返事を待つ。
反応が無い。あれっと思いながらもう一度押す。間、間、ま、ま。
呼び鈴が壊れているのかと思ってドアを叩こうとしたしたとき、背中に軽い衝撃があった。
(あ、やられた)と思った。エコは時々こんな幼稚な遊びをするのだった。
振り向くと嬉しそうに見上げる顔があった。
(子犬のようだ)とオレは思った。思わず「お手っ」と言いたくなるのに苦笑しながら、大げさに「びっくりしたなぁ」と言った。

「はい、これ」
エコが差し出した下げ袋を持って、その重さに思わずよろけそうになった。
「何人分の弁当だぁ」
「え、二人分よ。あとね、ポットのお湯が入ってるの。コーヒー入れてあげるね。あ、ビールだっけ、大丈夫よちゃんと入ってる。あ、その重さもあるね。えーと、あとはレジャーシートでしょ、それと・・・」
エコは歩きながら、あのメールの素っ気なさと比べて圧倒的に多い文字数を消費し続ける。姉のようだとオレは思った。
「近所といってもね、公園なのよ。少し坂道があるけど運動になっていいと思うんだ。お昼も美味しく感じると思うよ」

「公園が燃えているのか」
オレは独り言のようにつぶやく。
「そうよ、凄いよう。今年は特に綺麗だね。あ、去年は行かなかったんだっけ、行ったのは一昨年だったかな」
オレの手は下げ袋の紐が食い込んで痛くなってきている。右手から左手に持ち替えながら疑問を口にする。
「近所って言っていたたけど、まだなの?」

「ああ、もう少しよ。荷物替わろうか」
エコは、少しも替わるそぶりを見せずに、辺りを眺めながら「ああ、桜の紅葉も綺麗だなあ、私、好きだなあ」とのんきなものだ。
道は少しずつ坂道になってきて、公園の案内図が見えてきた。もみじ山公園という公園に入る。ハナミズキや桜の紅葉とモミジも少し見えてきた。
燃えている正体がわかった。それを伝えようとオレはエコの横顔を見る。少し上気したように見えるのはオレと一緒だからか。と思ってはみてもそれはそれほど意味を持たない。
「暑くなってきた。いっぱい着すぎたからなあ」
そういえば今日の最初、少し太ったかなと思ったのだった。
「脱げば」
「うーん、どうしようかな」
「脱がしてあげようか」
「いや、余計に脱がされそうだから」
エコは笑いながら言う。
「ははは、あんまり嬉しくもないが」
「えーっ、何よ。ふん、どうせ賞味期限切れですよ」
男と女とはいえ、従妹というのは中途半端な気もするが、その曖昧さもいい。
「なんだか、オレも暑くなってきたぞ」
「もう少しだよ、上から見る景色がいいんだぁ」

作品名:エコ1,2,3 作家名:伊達梁川