影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編
接触
児童公園に夕やけに染まる。鉄棒に腰かけた瑞が、紫暮と七星が学校で集めてきた話を聞いている。
「子どものいる場所に出没してる・・・ってことか」
「そう。だから狙いは子どもじゃないのかなって、俺たちは思ったんだ」
「子どもの死亡時刻を集めてるってかァ?なんのためにだ」
瑞が片手で髪をかきむしり唸る。
「それは、ないと思います」
七星が言う。遠慮がちだが、それでも確信を持ったような口調だった。瑞はそんな彼女の真摯なまなざしを、まっすぐに見つめ返している。
「あの顔はそんな・・・通り魔とか、そんなんじゃないと・・・思う。何か大切なものをなくして、探しているみたいだった。途方に暮れて・・・」
途方に暮れて、夕闇を彷徨う男。紫暮の脳裏に、さみしげな男の背中がイメージされる。
真っ黒なコート。毒々しい夕焼け。悲しみを刻む音・・・。一体何が目的なのだろう。
「時計男の噂は、どんどん広まっているけど・・・子どもがいなくなったとか、傷つけられたとか、そういう話はないそうです」
「被害はないってことか。声をかけられるだけで」
目的がわからなければ、らちがあかないではないか。紫暮は唸る。やはり接触するしか方法はなさそうだった。
「時計男が出没するときには、前兆があるって紫暮言ってたな」
瑞に話を振られ、頷く。時間がとまったような感覚と、世界から切り離されたかのような感覚。突然、地元の街がよそよそしくなったような違和感だった。街ではないものが、上手に街のふりをしているような。
作品名:影ふむ鬼子は隣のだれか2 神末一族番外編 作家名:ひなた眞白