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高柳敬紀の奇妙な日常

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 その日もいつものように起きて、いつものように家を出た。何ら変わりのない日常が始まるはずだ。
「ターカちゃんv」
 今日は確か一時間目は数学だったな。あいつは日付で当てるから俺には回らないはずだ。
「タカちゃんってば〜」
 二時間目の生物も、あのオヤジはプリントしか渡さねーから楽勝。
「いい加減に気づけぇっ!」
 でかい声が耳元で響いた。
「イヤだから、無視してんだろーが!」
 後ろに向かって怒鳴りつける。目の前の、普通ではあり得ない位置に見える脚。上方に目をやるとにかっと小憎らしい笑顔。
「おはよー、タカちゃん」
 こいつは何でか分からないが、俺につきまとう女。名前はマツリと言うらしい。宙に浮いたり壁をすり抜けたり、まんま幽霊なのだが、本人(?)は死んだ自覚がない。ま、大抵幽霊というのは自覚なしでなるモノなんだろうが。
 困ったことにマツリは見事に学校になじんでいた。二週間ほど前、突然現れたときは大パニックに陥ったが、今では普通に学校に通うことを認められ、同じクラスに在籍していたりする。
「『タカちゃん』はやめろって言っただろ」
「えー。だってみんな呼んでるじゃない」
「『ちゃん』はついてねーよ」
「あたしは誰にでも『ちゃん』ってつけるの」
 フワフワ浮いたままマツリはふんぞり返る。
「あーそうですか」
 パンツが見えそうだと忠告してやろうかと思ったが、むかついたのでやめた。そのままくるりと向きを変えて、学校へと向かう足を速める。
「え、え、ちょっとぉ〜」
 極力無視。朝から無駄なエネルギーは使いたくない。どうせ一日中つき合うハメになるのだから。
作品名:高柳敬紀の奇妙な日常 作家名:aqua*