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【創作】「背中合わせで抱きしめて」

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初日の勝負は、あっけなくウィズの勝ちで幕を下ろした。

「何も気にすることはないよ。まだ勝負は始まったばかりだ。君の勝ちは約束されている。それが神の御意志だ」

アレンはラスリナの言葉を聞き流しながら、ウィズは今何処にいるのだろうと考える。ウィズに会いたかった。会って、いつものように「少しは手加減しろよ」と笑って、ウィズが「手加減しても負けるだろ」と言って・・・・・・。
ウィズに会いたい。それだけを、アレンは考えていた。


ウィズは、上機嫌のベレトに部屋へ案内される。
こぢんまりとした部屋の真ん中に、一人には大きすぎるベッド。ウィズは服のままベッドに寝転がり、ぼんやりと天井を見上げた。
アレンと二人の時は、ベッドが狭いと喧嘩になったものだけれど。今は広すぎて、かえって落ち着かない。
こつこつとノックの音がしたと思ったら、ユークの顔が現れる。

「やあ、もう勝利の美酒に酔ってるのかい?」
「・・・・・・悪魔ってのは、礼儀がなってないんだな」
「ノックはしたよ。返事は待たなかったけど」

ユークはベッドに腰掛け、ティーカップを差し出してきた。

「お茶を一杯、付き合ってくれないか?」
「何の為に?」
「僕が退屈だからだよ」

ウィズは体を起こすと、カップを受け取った。ユークが注ぐお茶を見つめながら、

「帰らないと、父さんと母さんが心配する」
「大丈夫。君達の存在は世界から切り離されている。君とお兄さんは、最初から「いなかった」。誰も探さないし、心配しないよ」
「そう。それならいい」
「いいんだ」

ユークがくすくす笑いながら、ウィズの顔をのぞき込んでくる。

「何かあっても、誰も助けに来てくれないよ?」
「いつものことだ」
「君のお兄さん以外は、かな?」

ウィズはカップの向こう側にいるユークを、目を細めて眺めた。先ほどからやけにアレンを持ち出してくるのは、何か意図があってのことだろうか。
ユークは素知らぬ顔でお茶を飲み干すと、「おやすみ、ウィズ」と言って、するりと部屋を出ていく。ウィズは、ベッド脇の棚にカップを置くと、息を吐いて服を脱ぎ捨てた。

どちらにしろ、もう後戻りは出来ない。