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【創作】「背中合わせで抱きしめて」

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ウィズは、黒い犬を潰したような悪魔の顔を、醒めた目で眺める。ベレトと名乗った悪魔は、神との戦いとやらを長々説明し、ウィズが代理に選ばれたと告げた。ウィズは無感動に頷き、ベレトの語る「勝利した後の贅沢三昧」を聞き流す。

どうせ、勝っても殺す気だろう。

ウィズは、悪魔の甘言を鵜呑みにするほど世間知らずではなかった。贅沢な暮らしをさせて、その後は? 悪魔が人間を無条件で助けるなど、あり得ない。
アレンまで巻き込まれたことに怒りを覚えるが、神側だと聞いて安堵する。それなら、自分が勝たない限り、悪魔には手出しできないはずだ。

勝っても負けても、結果が同じなら。

勝てば、二人とも殺される。負ければ、その場で自分は悪魔に殺されるだろうが、神の代理であるアレンには手を出せないだろう。アレンだけは守る。何があっても。

「そのくらいでいいんじゃないか? 彼も退屈だろうし」

ふらりと現れた男性に、ベレトが顔をしかめる。

「ユーク、何処をうろついていた」
「散歩だよ。退屈だからね。僕がいないと、何か差し障るのかい?」

ユーク。お伽噺に出てくるドラゴンの名と同じだなと考えながら、ウィズは目の前の男を眺め回した。
見た目は人間、自分より一回りくらい上だろうか? だが、ベレトの態度から、同じ悪魔なのだろうと察しを付ける。ユークは、ウィズの無遠慮な視線も意に介した様子はなかった。

「おいで、ウィズ。勝負の前に、中を案内してあげよう」

苦々しげな顔のベレトを置いて、ウィズはユークの後を追う。ベレトと一緒にいるよりも、気楽そうだった。



勝負は一日一試合、最長で七日間続けられる。先に四勝した側の勝ち。
両陣営側の水晶によって張られた結界の中で、勝負が行われる。


「此処は・・・・・・?」

ラスリナに連れられて、アレンは見知らぬ建物に足を踏み入れた。
白亜の神殿、といった内装。広場の中央に椅子とテーブルが置かれている。向かいに、悪魔とウィズを見つけて、アレンは駆け出そうとするが、ラスリナに制止された。

「焦るな。君の使命は勝つことだ。それ以外に、彼を救う方法はない」

アレンはウィズに視線を向けるが、ウィズは無表情に中央のテーブルを見つめている。

「中では、一切の音が吸収される。君達を疑う訳ではないが、不正があってはいけないと、昔からの決まりなんだ。堪えてくれ」

ラスリナの言葉を聞き流しながら、アレンは必ず助けるからと決意を新たにした。もどかしい思いを抱えながらも、ラスリナに促されて中央へと進む。

アレンはウィズと向かい合わせで、椅子に座った。テーブルの上にあるのは、見慣れたボードゲーム。アレンは息を呑んでウィズを見る。ウィズは無表情のまま、駒を手に取った。
ゲームは、ウィズがいつも一人で遊んでいるもの。アレンは、ウィズにいつも負けていた。

もし俺が負けたら・・・・・・。

余計なことは考えるなと、アレンは頭を振って駒を取る。ウィズも勝ちにくるだろうか。悪魔に何を吹き込まれているか分からない。自分が勝ってウィズを助けると、伝えておきたかった。
向かいに座るウィズは表情を変えず、何を考えているのか分からない。アレンは、急に不安を覚える。
まるで、この世界にたった一人で取り残されたかのような。
アレンは震える指で、ボードに駒を置いた。