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【創作】「背中合わせで抱きしめて」

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「やあ、ウィズ。今夜は月が良く見えるよ」

ユークはさっさと窓辺に近づき、カーテンを開ける。月明かりが、柔らかく室内に差し込んできた。
背後でウィズの動く気配。ベッドを降りて、ユークに近づいてくる。そのまま、背中に抱きついてきた。

「どうしたんだい? 明日のことが心配かな?」
「・・・・・・やりたいことがあるんだ」

くぐもった声で、「でも、アレンが嫌がる」と続ける。

「俺がいると、アレンは自分のやりたいことが出来ないんだ。だから、側にいたら駄目なんだ」
「アレンがそう言ったのかい?」
「・・・・・・言わなくても分かる」
「双子だから?」

ウィズは無言で頷いた。ユークは、どう言えばこの子に伝わるだろうと考え、

「じゃあ、アレンも、君の考えに気づいてるんじゃないか?」
「・・・・・・えっ?」
「双子だから」

その可能性に思い至らなかったのか、前に回されたウィズの手が震えている。雲が月の前を横切り、ふと闇が周囲を覆った。

「君のしたいようにすればいいんじゃないかなあ。それで道が別れるなら、お兄さんも納得するよ」
「・・・・・・・・・・・・」
「双子だからって、いつも同じ必要はないんじゃないかな。君達は、別個の人間だ。それぞれが、やりたいことをやればいい」

ウィズが深い息を吐く。再び月が顔を出し、薄明かりが室内を照らした。

「道が同じだったら?」
「並んで、手をつないで歩けばいい。君達は、血を分けた兄弟なんだから」

沈黙が落ちる。ユークは月を見上げながら、

「君のやりたいことって?」
「・・・・・・魔道士になりたいんだ。アレンと一緒に」
「そう。君ならなれるよ。悪魔の誘惑に耳を貸さず、一人で耐え抜いてきたんだから」
「・・・・・・・・・・・・」

ウィズの手に、ユークは自分の手を重ねた。

「ウィズ、怖いかい?」
「怖いよ。・・・・・・怖い。死にたくない。家に帰りたい。アレンに会いたい・・・・・・」

震える声で呟くウィズ。ユークは体の向きを変えると、ウィズを抱き締めた。

「一人で良く頑張ったね。後は僕に任せなさい」

すすり泣くウィズの背を、ユークはそっと撫でる。柔らかな月明かりが、二人に降り注いだ。