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【創作】「背中合わせで抱きしめて」

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六日目、ウィズの勝ち。勝負は最終日へと持ち越される。

「アレン、まだ起きていたのか」

フリートが様子を見に部屋へ行くと、アレンはベッドに腰掛けてぼんやりと宙を見つめていた。ランプの中で、蝋燭の火がふらりと揺らめく。壁に映し出された影は、少年の内心を映しているかのようだった。

「・・・・・・眠れなくて」

フリートは、ぽつりと言うアレンの隣に腰を下ろして、その頭を引き寄せてやる。

「心配するな。ウィズは必ず助ける」

アレンはもぞもぞと身を動かして、フリートに腕を回してきた。布越しに伝わる温もりが、幼い頃に別れた息子を思い出させる。
出来るならば、このまま手元に置きたかった。アレンは自分を慕ってくれているし、ウィズとも上手くやれるだろう。両親は息子達の存在を忘れさせられていて、嘆くこともない。ならば、いっそ。

『双子は、君の息子の代わりかい?』

「・・・・・・明日には、二人とも家に帰れるからな。両親に会いたいだろう?」
「はい。なんだか、もう何年も会ってないような気がします」

フリートはアレンの頭を撫で、小さな体を抱きしめた。
この子にまで、親を失わせる訳にはいかない。

「・・・・・・それに、ウィズにも」

アレンは深く息を吐き出して、ぽつりぽつり、ウィズと喧嘩したことを話し出した。
フリートは、ウィズが言い出したという進路に、内心首を傾げる。いかにも子供らしい、無謀な思いつきだ。この年頃にありがちな、万能感からの無謀な計画。けれど、ユークから伝え聞いたウィズの姿には、どうにもそぐわない。アレンが言い出したのなら、まだ納得しただろう。

「・・・・・・俺のせいなんです」

アレンの声が震えていた。フリートはハッとして、アレンの肩を抱く。



『アレンは、お兄ちゃんだから』

その言葉が、ずっとアレンを縛っていた。普段は双子としてひとまとめにされ、何か問題が起これば兄扱いされる。
同じ日に生まれながら何故自分だけが、と苛立つことも多かった。
ウィズは我が儘で、気紛れで、度々問題を起こす。その都度、周囲から言われたのは。

『ウィズの面倒を見てあげて』

ウィズが羨ましかった。妬ましかった。自分が一人っ子だったらと、空想したこともある。
けれど。

『やりたいことがあるんだ』

ウィズは家を出ると言い出した。魔道士には興味がないとも。
それが嘘なことくらい、分かっている。元々、魔道士になりたがったのはウィズなのだ。それなのに。

「俺が・・・・・・俺が、ウィズのこと邪魔だって思ったから。ウィズがいなかったら、もっと自由にやれるのにって。だから・・・・・・だから、ウィズはあんな嘘ついたんです。俺のせいで・・・・・・俺のせいなんです・・・・・・」

ウィズはやりたいことを捨てて、嘘を吐いて、自分から離れていこうとしている。そうなって初めて気づいた。誰よりもウィズを必要としていたのは、自分だったと。

「・・・・・・ウィズと離れたくない・・・・・・離れたくないんです」

しゃくりあげながら繰り返すアレンの頭を、フリートの大きな手が撫でる。

「お前は一人ではない。私がついている」

見上げれば、穏やかな優しい笑顔があった。アレンは、幼い頃、寝室へおやすみを言いにきた父を思い出す。

「お前もウィズも、必ず助ける。私を信じなさい」
「・・・・・・はい」

アレンは涙に濡れた顔のまま、フリートの胸に顔を埋めた。