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深く眠りし存在の

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「名前を教えてくれるかな」
「わたしね、さっちゃん、てゆうの、いつつ」
 言葉を探るようにして、ひとつずつ区切って話すさっちゃんは両手を椅子について、伸ばした膝を左右に動かしキョロキョロと珍しげにあたりを見廻して、首を傾げた。
「おじちゃん、だれ?」
 松下は度肝を抜かれた。いきなり5歳だという。体は大人にも関わらず仕草が幼女らしい振る舞いに、とまどいと違和感を持った。
「お医者さんだよ。君たちの病気を治そうと思っているんだけどね、これから仲良くしてくれるかな」
「あそんで、くれるなら、いいよ。なにか、あそぶもん、ないの」
「う〜ん、何がいいかな」
「おにんぎょさん。あかい、おべべ、きてね、くろい、かみをした、おにんぎょさん、が、いい」
「分かった。次会うまでに、用意しとこうね」


「名前と歳を教えてくれるかな」
「忍です。15歳です」
 おびえたように両掌を胸の前で組んで、うつむき加減で上目遣いに答えた。
「ありがとう。忍君は、何かを恐れているように見えるね」
「だって、私をいじめようとしてるんですもん」
「ここには、君をいじめようとしている者はいないよ。だから安心してくつろぎなさい」
「でも、明理さんが、ずっと出してくれなかったから。だからずっと、眠っていたの」
「そう、詳しい話は今度会った時に、ゆっくりと聞かせてくれるかな」
「分かりました」
 そして、忍は眼を閉じた。
作品名:深く眠りし存在の 作家名:健忘真実