影ふむ鬼子は隣のだれか1 神末一族番外編
(でも、あんま楽しそうに笑ってるとこ見たことない・・・)
授業中、つまらなさそうに頬杖をつく横顔。
弓を引くときの、怖いくらい真剣な瞳。
同じクラスになってから、七星が見てきたのはそんな表情ばかり。
嬉しそうに、楽しそうに笑ってるとこ、見てみたいな。
そんなことを思い始めたら、いつからかもう目が離せなくなっていたのだ。
「おい矢野!矢野~!」
教室に入った七星のそばに、一人の男子生徒が近寄ってきた。
「な、なに山岡」
「おまえ時計男に遭ったってマジ?なんか職員室で聞こえたんだけど」
最悪、と七星は顔を歪めた。よりにもよって、この噂話大好きな山岡に聞かれるなんて。
「その怪我も、もしかして時計男かよ。いいなあ俺も、遭ってみてえなあ」
ざわ、と教室がざわめく。
「ちょっと山岡、やめなよ」
「そうだよ」
咄嗟にかばってくれる友人の隙間から、好奇の視線が跳んでくる。七星は俯いてくちびるをかみ締める。
「なあ、時間きかれたの?」
もうほっといてよ、と喉から出かかったそのとき。
「山岡邪魔。のいて」
山岡より頭一個分大きい紫暮が、教室の入り口を塞いでいる山岡を見下ろしていた。
作品名:影ふむ鬼子は隣のだれか1 神末一族番外編 作家名:ひなた眞白